7年ごしのバイク復帰 わたしとトライデント 2/3
前編のつづき
トライアンフやトライデントについてや、ここにたどりつくまでの話をした前編はこちら。
後編はどちらかというとバイクわかる人向けの内容だよ。
後編はVol.2とVol.3に分かれてて、Vol.2はレビュー(インプレッション)が主。
さぁ、トライデントとの生活だ
触れる
本当に突発だったバイク復帰。 さすがにフル装備揃え直すのはきついから、体重増で着られなくなったジャケットと、体重増できつくなってしまったヘルメット内装を新調してトライデントとの生活が始まった。
足着きはやっぱり良くて、乗ったまま取り回せるし、信号待ちでも安定感がある。ブレーキを踏みながら左足べったりつけることが可能で、両足でも不安はないくらい。母趾球がつくかつかないかくらいかな。 SS900とかMT-09は乗ったまま取り回すのは難しかったので結構面倒だったんだよね。 足着きに関して重要な要素が、足を着いているときにステップに当たらないこと。 これについては、今までのバイクは全部ステップに当たるバイクだったから新鮮だし、とっても良い。あれ結構痛いんだよね。
足着き悪いって言ってるレビューもあるみたいだけど、SV400Sより良いから、普通にいいと思うなぁ。 MT-09は割とつま先つんつんで大変だった。足つこうとするとステップにあたっちゃうしね。
これってすごく重要な要素な気がした。片足でもつま先立ちのバイク、乗るのにものすごく気力が必要だから。
姿勢は、ステップが後退してる感じはないけど、ステップ位置に合わせて後ろに座る必要はあって、そうするとハンドルが遠くなって、もともと低い位置ではあるので少し前傾気味。 スパーダと同じくらいだから、ニンジャ400くらいのトップブリッジ上につくタイプのセパハンと同じくらいの高さかな。
ステップが後退してる感じはしないって言ったけど、前でもない。 普通にロードスポーツの位置。
250ccみたいな「小さいバイク」感のあるポジションだけど、窮屈さはない。足はSV400SやSS900より余裕があるし、前傾ではあるけど姿勢がきついほどではないし、ハンドル切ったときに肘がつっかえることもない。 ちょっと不思議。
状態は腕を突っ張るようにすればそれなりに起きるけど、それでも「ほぼ腹筋で支えなくていい程度の前傾」なので、CB400SFみたいな古典的なバーハンドル車ほどじゃない。 ハンドルは絞りがあるから若干セパハンっぽさがあって、ちょっと高くてちょっとワイドくらい。 抑え込めるように肘にゆとりをもたせると結構前傾になる。トップブリッジ上マウントのセパハンと変わらない感じだけど、ワイドなので窮屈感はない。
脚も窮屈じゃないけど、シートの前のほうに座ると足首の角度的にきついから、だいぶ後ろに座るのが標準。 そうすると急加速に耐えられるような角度ではなくなるから、割と平和的なポジションかな。
見た目からすると非常にグリップしやすそうな凸凹になったタンクのえぐりに脚がきそうだけど、実際はタンクとサイドカバーの間の窪んでる部分にくる感じ。 タンク自体も細い方だけど、サイドカバーとの間の窪みはもっとずっと細いから、ニーグリップした印象ではさらに細く感じる。 日本仕様でシートが下がってこうなってるのかと思いきや、世界共通でコレで、オプションでハイシート設定もないので、そういうふうに作ってあるみたい。
走っていると足首の角度的にはもうちょっとシート高くてもいいなって思ったりする。
わたしの……
購入したのはSilver Ice / Diablo Redというカラー。
2024年モデルは新色の “Jet Black / Triumph Racing Yellow” を始めとして、 “Sapphire Black”, “Matt Jet Black / Matt Silver Ice”, “Silver Ice / Diablo Red” の計4ラインナップ。
基本的にはツートンで、単色っぽいSapphire Blackもラジエーターカバーがシルバーになる。グラフィックはSapphire Blackだけ小さなトライアンフロゴで、他のカラーは共通のでっかいトライアンフロゴ。 ちなみに、塗り分けもSapphire Blackだけ違う。
カラーはキャンペーン適用車が展示車だったから選べなかったんだけど、どのみちこのラインナップだったら私は赤を選んでたと思うから問題なし。
「赤」って言ってるけど、赤要素はラジエーターカバーとテール裏だけだから結構控えめ。 タンクはグレーで、フロントフェンダーはグレーと黒のツートンなので、シックな黒とグレーのモノトーンに赤のアクセントが効いてる感じ。
トライデントは短くてシュッとしたテールが特徴的だけど、私のはオプションのグラブバーがついてるからだいぶワイドに見える。
クイックシフターはシフトロッドのところについてる部品。 目立たないけどお値段はなかなか。
フレームプロテクターは純正オプションで、アルミフレームにウレタンパッドがついてる。結構お高い。 ほぼエンジンと同等の張り出しで、ライダーから見ると存在感あるけど、横から見るとほとんど気づかない。
なめらかクリーミーエンジン (夏は苦手!)
色んな意見があるエンジンについてだけど、超スムーズに回る。 アイドリングで走らせていても燃焼タイミングで加減速するような感覚もないし、1速で回しても怖くなくて、10km/hくらいの超低速で走っていても不安定にならない。
エンジンのツキはとてもマイルドで、うっかりガバ開けしてしまってもすっとんでいったりしない。 加速感はなかなかあるけれど、手応えを感じる程度に開けてもそんなに速度は出ない。ギアがとってもショートなので、ものすごいギュインギュイン走ってる感じがあるけど、実際はそうでもない。 じゃあ遅くて平和なエンジンなのかというとそんなことはなくて、そこからもうひと開けすれば十分速いし、大型らしい加速をする。
おそらく単なるエンジン特性だけでなく、電子制御スロットルの制御もあると思うんだけど、回転数が上がるほどスロットルレスポンスは良くなる。 低回転だととってももっさりしていて、ラグいんだけど、3500rpmあたりから反応がよくなってきて、5000rpmを越えるとはじかれるように動くようになる。 これは、低回転では本当に反応が遅くてもっさりした感じなのとの対比だから、ギャンギャンにリニアなタイプのバイクみたいな反応の良さになるわけではなくて高回転でもマイルドなほうではある。けど、高回転の反応はマイルドな仕立てのバイクの中ではかなり良いほうで、過激バイクのレインモードよりは鋭いんじゃないかくらい。1 トライデントでレインモードを使った場合は、高回転でもちょっとラグい感じになる。
この低回転もっさりのせいで、フラットトルク感はぜんぜんない。 フラットトルク特性だと低回転からゴリゴリゴリって加速するイメージだけど、トライデントは低回転からの加速力は非常に控えめで、鋭く加速したいならシフトダウンしたほうがいい。 だから、ゴリゴリしたバイクをお望みの方には向いてない。 もちろん、排気量相応の力強さ自体はあるんだけど、もっっさりしてる。
最高出力は10500rpmというレブ回転数で発揮する形なので、実際は回転数が上がるほどぐんぐん加速していく、かなり伸びのあるエンジン、つまりスポーツバイクらしいエンジンになってる。 ただ、もっさりしているとは言え低回転高ギアから加速できることはできるので、スーパースポーツみたいな高回転志向のエンジンではなくて、ストリートトリプルよりも低回転型というのは分かるっちゃ分かる。 でも、「低回転型エンジン」ではなくて、「中低速も機能するようにしたエンジン」って感じ。
ギア比は、50km/hで6速に安定して入れられるほどショート。 80km/hくらいで6速4000rpm近くまで回ってしまうから、高速道路はずっとぎゅんぎゅんしてる。フェアリングのないバイクで風がつらいっていうのもあるから、高速道路では100km/h出すより左車線で80km/hのほうが合ってるかも。
ギア比から推測すると最高速は210km/hくらいかな?これは大型バイクとしては結構低め。パワー的にも250km/hは絶対出ないだろうなって感じ。
なお、6速60km/hで3000rpmを越えるくらいで、500kmまでの慣らし運転での制限回転数は6速で83km/h。 驚くほどショート。 なので、慣らし運転は特にギアチェンジが忙しい。
世界的に見ても最高速度の制限は速くても130km/hくらいだから2、だいぶ現実的なラインに落とし込んでると思う。でも、6速も全然ロングじゃないから、市街地走行がメインで、 高速道路での長距離移動とかはあんまり得意じゃない感じかな。 ちなみに、バイクは200km/hくらいは実用的に、ポンと出るものが結構多い。250km/hくらいになるとスポーツバイクでも出るか出ないかのところになることが多い感じ。
レブ警告灯は最初は4000rpmで、500kmで5000rpm、1000kmで6000rpmに引き上げられる。 5000rpmで6速103km/hとなってあまり困らなくなり、6000rpmになれば120km/hまで出るようになるから、法定速度までを考えると1000km走れば不自由しなくなる。 逆に言うと1000kmまでは色々気を遣う。
おそらく燃焼間隔は240°で等間隔だと思う。 かなり専門的な話になるけど、エンジンは各気筒が吸入・圧縮・燃焼・廃棄という工程を上下2回する間に繰り返すんだけど、複気筒のエンジンの場合は「燃焼のタイミング」っていうのがある。 これはエンジンのレイアウトとクランクの位相角によって決まるんだけど、2気筒で等間隔だと「ドッドッドッドッ」っていう感じになって、不等間隔だと「ドドッドドッドドッドドッ」って感じになる。ハーレーみたいな感じ。
等間隔はスムーズに回転して振動が少なくて、不等間隔だと鼓動感が生まれるのと、路面をつかんで蹴り出す感じが強くなる。普通に走るだけの部分にフォーカスすれば、等間隔は快適、不等間隔は生き物感がある。
3気筒エンジンで一番無難な方式は240-240-240の等間隔方式。 3気筒エンジンで一番一般的な形式でもあるし、ヤマハのMT-09の「CP3」エンジンもこの方式。 トライアンフのタイガー900/1200が採用する「T-Plain」エンジンは180-270-270の不等間隔なんだけど、トライデントは等間隔になってるみたい。ストリートトリプルと同じだね。
等間隔と不等間隔どっちが走りやすいかというのは人と走り方による。バイクには曲がり方が色々あって、アクセルを開けて曲がる派の人は不等間隔のほうが曲がりやすい。でも「アクセルを開けてコントロール」が求められるということを考えると、一般的には等間隔のほうが扱いやすいと思われることが多い。 でも、不等間隔だと生き物っぽい鼓動感が出るから、「味わい重視」なら不等間隔がいい、というのが普通の考え方。
トライデントが等間隔ってことは、雰囲気や味わいよりも扱いやすさを大事にしたってことなのかな。
特に苦手な回転数・速度や加速状態もないので、クルマと一緒に走っていてもしんどくならず、ずっと流れに乗ったまま走れる。 エンジンの主張は弱いから別に特別楽しくはないけど、ゆっくり走るのも苦じゃない。 振動はなくはないけど、手が痺れたりはしない。
英国紳士には日本の夏の暑さは理解できないみたいで、真夏に渋滞するとすぐ水温警告灯がついちゃう。 このバイクは純粋にエンジンが熱いタイプで、水温がそのまま熱さに直結してる。 水温警告灯がつく状態になるとものすごい熱で脚を火傷しそうなほど。というか、実際ちょっと火傷した。 MT-09は水温はだいたい113〜120℃で安定していた(つまり常時ものすごく熱い)んだけど、トライデントは水温警告灯がついちゃうので、渋滞は避けたほうがいいと思う。水温が上がってきたらどこかに停めて休憩かな。なかなかそうもいかないとは思うけど。 水温が低いときはぬるいほう。
水温警告灯がついてる状態ではエンジンが壊れたり燃えたりしてもおかしくないから、日本の夏の渋滞は耐えられないと思ったほうがいい。
音に関しては決して静かではないけど特段うるさいわけではない、くらいなんだけど、非常にショートな上に2500rpm以上を維持するようなバイクなせいで、回転数高い割に速度が出なくて結果的に割とうるさいバイクになってる。 音自体はうるさくても速いバイクならすぐどっか行くからね。
MT-09は規制的に最も静かだった時代のバイクで、MT-09だと歩行者の後ろからゆーーーっくり走っていくと、存在に気づかれなくて近づいたときにびっくりされる、ということが結構あった。 SV400Sも結構静かなバイクで、聴こえないほどではないはずなんだけど、気づかれないことはあった。 それと比べるとトライデントはちょっと離れててもチラ見されたりするくらいだから、「静か」というほどではないと思う。
ちなみに、ファルコは近接94dBという仕様なんだけど、エンジンかけるとバイクの側では会話は不可能というレベルの音がする。 SSは社外マフラーがついてて、耳キーンなる音してたから……
現代感たっぷりスロットルとクラッチ
実は2015年にタイガーに乗ったことがあって、そのときはライドバイワイヤ3の特性がほんっとに苦手だった。なんか、意識してスロットルを戻さなきゃいけない感じで。 それまでトライアンフかなり好きだったんだけど、「もうトライアンフは無理かなぁ」と思ったもの。
トライデントはスロットルに違和感は全くない。 むしろ逆に重すぎるとすら思う。長時間乗ってるとしんどい。ライドバイワイヤなのにここまで重くする必要あったかな……
どういう方式を採用しているかは不明だけど、スリッパークラッチが採用されていて、バックトルクが抑制されてる。このため、下り坂はギアを落とすだけだと減速しきれないので、ブレーキをかける必要あり。
クラッチはワイヤー式なんだけど、トルクアシストがあって結構軽い。
オプションのクイックシフターは、なんかいまいち。 状況によってかなり挙動が変わって安定しない感じだし、アップも加速の途切れ感が強いから全然クイックじゃない。 うまく入らないこともあるし、このクオリティだったら別になくていいなぁって感じ。
シフトはちゃんと押し切ると「がちゃん」と入るんだけど、実はそこまで入れなくてもシフトチェンジできる。 で、シフトフィール自体はにゅーっとして、にゅっ、にゅっとシフトする感じ。 押し切るとにゅーの途中にがちゃんとするポイントがある感じですごい変なフィーリング。
要素の多いハンドリング
参考にしたい人向けの説明
トライデントのハンドリングはネガティブに感じられる要素があり、「倒し込みで急激に切れ込み、旋回でふくらむ」「コーナーリング中に跳ねて外にはじき出されてしまう」「低い速度でもキックバック4を頻繁に発生させる」「トラクションがかかりにくく、ライダーが機敏に動かすのが難しい」っていうのがある。
これらは問題として大きいので、車両の不具合を疑うくらいには悩ましく、意識していた。 ここは参考にしようとしている人のためにちゃんと説明したほうがいいと思うから、物語に沿ってじゃなく、ちゃんと説明するね。
まず基本的なトライデントのハンドリングキャラクターだけど、非常に機敏で、倒し込みに抵抗感がない。 スリッパークラッチの効果でエンジンブレーキが非常に弱いことも相まって「立ちが弱い」キャラクターで、簡単に倒せる一方で、コーナーリングアプローチが結構難しいでもある。 オーソドックスなバイクの乗り方は、減速でバイクを安定させてアプローチし、ブレーキを離してスパッと倒すだからね。
ハンドリングで問題を生じている最大の要素は、サスペンションのやわらかさ。 前後ともサスペンションがソフトで、リヤに関しては私の体重だと簡単に底付きしちゃう。 この「底付きしてしまうソフトさ」のせいで路面のうねりなんかに弱くてコーナーリング中に簡単に跳ねちゃう。 フロントもソフトなせいで外乱に弱くて、キックバックを発生させやすい(キックバックに敏感な)要因になってる。
リヤに関してはプリロード調整機構がついていて、標準で最弱になっているので、体重に合わせてプリロードをかければだいぶ軽減される。 私の場合は5までかけたらコーナーリング中に弾かれることはほとんどなくなったけど、また路面ギャップで底付きして腰が死ぬので7(最強)まで上げた。
フロントは調整機構が何もないのでどうすることもできない。 アップグレードも余地は少なめで、ハイパープロからスプリングが出てる程度。
車体をコントロールするという意味では「回転数を上げる」が結構重要になる。 慣らし運転の第一段階では4000rpmに制限されるけど、4000rpm以下ではかなりフラフラする上にスロットルに車体があまり反応してこなくて、積極的にバイクを動かすのが難しい。 でも4000rpm以上、少なくとも3000rpm回していればバイクを動かしやすくなるので、慣らしが終わると自然に印象変わってくる。
フラフラして不安定な部分は、その回転数を高めに維持するのと、リヤブレーキを使うことを意識すると相当自在に動くようになってくる。 倒れ込みすぎる、ふらつく、ふくらむといった時にリヤブレーキで抑えておけばかなり簡単に制御できて、こうなると倒し込みの軽さのおかげでヒラヒラと軽快に走れる。 切り返しもものすごく軽いから、タイトなつづら折りも楽々走れる。
そしてキックバックの問題だけど、これはセルフステア5の問題だった。
トライデントはセルフステアがかなり強くて、ハンドルがぐいっと持っていかれる感覚がある。しかもちょっとしたギャップや路面のうねりにも非常に敏感だし、ハンドル切れ角の大きさもあってハンドルは大きく切れる挙動を示す。
これに対して抑え込むような力を加えると簡単にキックバックを起こす。 セルフステアが強いせいでつい安定させようと抑え込んでしまいやすいけど、逆効果。
これは曲がっているときだけじゃなくて、高速道路とかで路面のうねりがあるところでも発生するから、常にしっかりとニーグリップして、セルフステアを妨げないようにハンドルに体重をかけないように意識しておく必要がある。
「ふらふらする」も「ぐらぐらする」も結局ここが原因だから、高めの回転数でスロットルに反応するようにして、要所をリヤブレーキで抑えて、あとはセルフステアを狭たげないように乗れば自由自在。
初心者向けバイクの顔しておきながら、実際はかなりライダーが操る楽しみがあるバイク……というか、バイクをちゃんと理解して乗ることを求めてくるバイクで、基礎に忠実なライディングをすれば良いではあるけれど、雑な乗り方や乱暴な乗り方には厳しいから、決して懐の広い感じじゃない。 このあたり、外車だなぁって感じがする。
詳しくない人向けの説明と物語
最初乗り始めたときは、あまりに立ちが弱くてフラフラするから、「安定性を工場に忘れてきたんじゃないか」と思った。 しかもフラッと倒れて切れ込むのに、そこから旋回力が引き出されなくてふくらんでいってしまうので、「難しいバイクだなぁ」と思った。
フロントブレーキをかけてもあまり立たないし、エンジンブレーキはそもそもスリッパークラッチの効果が大きすぎて大してかからない。 アプローチからの倒し込みがはっきりしなくて、倒し込んでもフラフラして難しい。
さらに旋回中にぐらぐらしたり、キックバック発生させて暴れたりするし、旋回中に弾かれて曲がらなくなったりしてまるで跳ね馬。
別に過激系のバイクみたいな「いかにもやばい」って感じではないし、MT-09みたいにとっかかりのない感じでもないんだけど、不具合を疑いたくなるような危うさで「何かがおかしい気がするなー」って思ってた。
それでもMT-09と違ってちゃんと進展があった。 初日に試行錯誤して、「リヤブレーキがポイント」っていうのを見つけたのが最初。 リヤブレーキで抑えればふくらんでいっちゃうっていうのは解消されるし、フラフラして安定感がない感じも軽減される。
ここで知らない人向けの説明!
バイクのブレーキは基本的に前後が分かれていて、手で前ブレーキを、足で後ろブレーキを操作する。 制動力の大部分は前ブレーキで発生させるので、後ろブレーキは姿勢制御が主な役割。 それと、小旋回を要求される競技のジムカーナでは、回転速度の差で回るために後ろブレーキで後ろタイヤを抑え込んだりする。
普通は前ブレーキをかけるとバイクを立たせる力が働くので、倒せなくなる。 で、もともとこれを利用してアプローチしたかったんだけど、トライデントはその力が弱すぎて困惑したってことだね。 安定状態から不安定な状態にすると同時にスパッと倒し込む、っていうのが定番テクニックだったんだけど。
次の進展は、走行距離が500kmを越えたときに訪れた。 500km未満では最高回転数が4000rpmに絞られているけど、500〜1000kmでは5000rpmにアップする。 ギアがショートですぐフケちゃう関係上、4000rpm制限だと3000rpm以上で走ることはあんまりないんだけど、5000rpm制限になると3500rpmくらいで走れるようになる。 ちなみに、1速3500rpmは20km/hくらいなので、飛ばす必要は全然ない。
さすがにそれくらい回ってるとある程度安定感は出てくるし、なにより3500rpmくらいからスロットルに対する感度がよくなって、右手でバイクをコントロールできるようになってくる。 これでかなり自由自在に乗れるようになって、リヤブレーキに頼りまくりってこともなくなった。
けど、この段階でもまだ、全体的にアンダーステア気味でハンドリングはクイックな感じなのに曲がらないっていう矛盾に悩んでいたし、コーナーリング中に外にはじき出されるっていう問題と、キックバックでバイクが暴れるっていう問題が深刻だった。
もうこの段階では「サスペンションがやわらかすぎて底付きしてるんじゃないか」っていう疑惑はあったから、プリロードを増やしたんだけど、これが大正解。 バイクが跳ねて外にもっていかれることがなくなって、だいぶ安心感が出た。 この時点で走行距離1000kmくらい。
けどやっぱりハンドリングに違和感は残っていたし、何よりキックバックが問題だった。 山梨ツーリングでは、国道20号線を走っているときに40km/hくらいで激しいキックバックにより落車しかけて、さらに帰りには中央道を走っているときに2回ほどキックバックに襲われて、やっぱり不具合なのではって悩んだ。
次の転機は、渋滞気味で山道を30km/hくらいで走ってるときだった。 速度が遅いからリラックスしてハンドルも軽く指を添える程度で走ってたんだけど、あんまり倒してないのにぐいぐいハンドルが切れて、「そんな切れる?」ってなった。
そもそもブランクがあったからバイクを抑えるのに必要な内転筋がすっかり弱ってしまってたからハンドルにしがみつくしかなかったけど、ある程度距離乗ってればさすがに内転筋も復活してくるから、セルフステアの邪魔をしないように気をつけて乗ってみた。
するとどうでしょう。 めっちゃ曲がる。ハンドル主体でめっちゃ曲がるから、倒す必要ほとんどない。 結局「クイックなハンドリング」っていうのが正しくて、アンダーステアな感じは単にセルフステアを妨げちゃってたからっぽい。
そしてキックバックもハンドルを抑え込んでるせいで発生してたみたいで、そこを気をつけたら発生しなくなった。
結局そこに至るまでに3000kmほどかかってるから、だいぶ苦戦した感じがするけど、そこまで到達するとめっちゃ楽しい。 倒すのに抵抗の全然ないヒラヒラしたハンドリングだし、リヤブレーキ踏めば低速小旋回も楽々なのでどんな道でも自由自在に走れる。
でも割とちゃんと走らせることを要求されるから楽はできない感じだし、懐狭めで初心者フレンドリーじゃないよね。 基本に忠実に走ればいいだけだから難しいってほどじゃないんだけど、逆に言えば基礎が仕上がってないからこその初心者なんだから、初心者には厳し目だなって思ったりする。
にゅにゅっとしたブレーキ
ブレーキは、私が一番こだわるポイント。 ブレーキを単純な良し悪しで言うのは難しくて、というのも高級・高性能なブレーキというのは「弱い力でもしっかり効かせられて、強く効いた状態の中で強める弱めるというのを繊細にコントロールできる」というものになっていて、逆に安価なブレーキは「強く引いても弱く引いてもふわっと効いて、緩めたときも緩やかに開放される」みたいな感じになる。 それだと「高性能ブレーキのほうがいい」ってなりそうだけど、弱い力でもガツンと効くから、咄嗟のときに強くかけすぎてしまう危険性もあり、ブレーキコントロールを繊細に行う必要もある。なので、高級なバイクでも初心者向けのモデルは安価なブレーキの機構を採用してたりする。 私はブレーキングがとても得意ということもあって、レースで使うような高性能ブレーキが好き。MT-09でも満足できなくてブレーキマスターを交換していたくらい。(それでも満足までは行かなかった。)
トライデントのブレーキは「アキシャルマウント片押し2ポッドブレーキキャリパー、横型ブレーキマスター」という、いわゆる初心者セット。「安物バイクのブレーキ」っていう印象が強い人も多いと思う。 ストリートトリプルRは「ラジアルマウント対向4ポッドブレーキキャリパー、横型ブレーキマスター」なのでちょっとグレードダウンされてる。 もちろんコストダウンっていう意味もあるだろうし、スポーティなストリートトリプルとの差別化の意味もあるだろうけど、トライアンフがトライデントを「入門バイク」にしたいという意図はありありなので、初心者にとって安全なブレーキを選択した、ということだと思う。 でもまぁ、一言で言えば私のキライなタイプの「曖昧なブレーキになる組み合わせ」になっている。
実際に乗ってみた感じは、ぎゅっと握れば十分につんのめるし、でも不用意な握りでつんのめりそうにならないし、気を使わなくていい扱いやすいブレーキって感じ。 でも曖昧なところはやっぱりあって、ブレーキでぎゅっとフロントを沈めてターンインのきっかけにする……みたいなのは苦手。 けどそんなことをしなくても簡単に倒せるハンドリングの軽さがあるから、曲げるためにがんばってブレーキする感じは皆無。 にゅーっと減速してにゅーっと曲がっていくのでメリハリ不足ではある。
バイクが非常に立ちが弱くて強めのブレーキで安定させたいのと、旋回力を引き出すためにフロントフォークをしっかり沈めたいという性格とは噛み合ってないけど、あまりスピードを出さずにのんびり走りたい性格とは合ってる。
ただ、無理なタイミングで右折されたりして急ブレーキかける必要があるときは力で握る必要があるから、そこらへんはもっと効かせやすいブレーキシステムが欲しいときもある。
充実の装備
メーター類は上下に分かれている。 これは単にデザイン上分かれているわけじゃなくて、上半分はモノクロ液晶、下半分がカラー液晶になってる。下半分がTFTで上半分がLCDって言われたりすることもあるんだけど、そもそもTFTはLCDの一種だし、上半分も単純マトリックスには見えないから全部TFTではあるんじゃないかな。
いずれにせよ2画面の液晶ディスプレイによるデジタルメーターで、上半分が回転数、速度、燃料と付加情報を表示するためのディスプレイ、下半分がマルチファンクションディスプレイになってる。 十字キーとSETボタンで操作するタイプで、形は丸メーターだけどかなり高機能。
最大輝度はかなり高くて、とっても見やすい。 MT-09のメーターはコントラストがすごく弱い単純マトリックスのディスプレイだったからかなり見づらかったし、見た目もよくなかった。
バーグラフのタコメーターは別に見やすくはない。輝度は高いんだけど、バーグラフだとせめて色付きじゃないと把握はしづらいかなぁ。別に回転数に神経質になるようなバイクじゃないから気にはならないけど。 正直見づらすぎて回転数はほぼ見てない。
シフトインジケーターがついていて、指定回転数になるとバーグラフが点滅するようになっている。メーターを見ていれば分かるけど、メーターに注意を引くような感じはないので、そんなに見やすくはない。 ただ、慣らし運転中は慣らしの指定回転数で点滅するようになっているから、これはわかりやすくていい。それでも気づきにくいけど。
電子デバイスはABSとTCS、オプションでTSA(クイックシフター)。すべてオンオフ可能。 ABSとTCSはroadとrainの2つの設定がある。
ABSの介入が早すぎる、っていうレビューもあるんだけど、私が試した限りではかなり強いブレーキングでもABS介入はなかった。下りで思いがけない曲率だったときはリヤで作動させたことがあるけど、あの状況だと普通にロックしてた可能性があるので妥当。しかもレインモードだったし。 もしかしたら年次改良でそこらへんも改善されてるのかも。 トライデントはサイドスタンドの強度不足でリコールが出てるからそこは改善されているだろうし、マップセンサーまわりの持病があるようなんだけど、それも改善されているかもしれない。
マルチファンクションディスプレイには何を表示するかも選択できる。 ギヤポジションを表示させてないときは、上側にギヤポジションが表示されるようになっている。まぁ、見づらいけど。
マルチファンクションディスプレイに水温計を大きく表示できるのは結構便利。このバイクは水温あったまりやすいからね。 あと、ギアインジケーターを出すと時計も一緒に出るから、通常はギアインジケーターを出しておけばいい。
瞬間燃費計にはサブ表示として航続可能距離が表示されていて、給油ポイントを設定する上でとても便利。 もちろん、直近の燃費に大きく左右されるから、表示ギリギリの給油を狙うのは危険すぎる。
オドメーターは起動時に表示されるだけ。
ライディングモードは専用のモードボタンで設定。走行中も設定できるけど、めちゃくちゃ押しにくい。 ライディングモード自体はRoadとRainの2種類。この2種類にはそれぞれABS, TCS, MAPを設定可能。といっても設定する余地がないけど。 RoadとRainの違いも小さいから微妙。ただ、Rainのほうがアクセルレスポンスはよりマイルドだから、混雑時や渋滞時は楽になる。
ライディングモードが走行中も設定できると言及している人もいるんだけど、設定画面自体は入れるものの、走行中(スロットルオン)は確定ができない。 モード画面は戻ってからもレジュームするので、走行中にもう一度開くと設定した表示になってるから設定できるかのように思うかもしれないけど、一度スイッチオフすると戻ってる。 スロットルオフすればバイクが動いている状態でも設定可能。
特筆したい点として、ライトがめちゃくちゃ明るくて、配光も広々。 今まで乗ったバイクはファルコが結構明るいくらいでそれ以外は暗くて6、RX-8のライトもめっちゃ暗いので、衝撃的。 明るいライトが映り込むと他車が接近中なのかと思っちゃう。
ウィンカーが自動で消える機能あり。 Auto Basicは8秒+65mで自動消灯、Auto Advancedだとチョン押しで3回点滅、長押しで8秒+65mで自動消灯。 車線変更完了まで3回点滅の間にやるのはちょっとマナー的に良くないと思う。 連続左折とか、車線変更から右折レーンに入って右折みたいなときに消えちゃうので、私はManualにしてる。
ただ、ウィンカーがむにゅっとしたスイッチになっていて、操作感が乏しすぎるのが難点。ついてなかったり消せてなかったりすることが多発する。 特にキャンセル操作が効いてないことが多い。
ハンドルロックが、普通は「押しながら回す」なんだけど、トライデントは「押して、戻してから回す」なのですっごいわかりにくい。めちゃくちゃ手こずった。 ハンドルを完全に切った状態だとかからないのも罠。
ミラーはオプションにバーエンドミラーがあるけど、私のは標準ミラー。 標準ミラーは普通にマスターのところにネジ止めするタイプで、結構短い。 ミラーは時とともにどんどん短くなっている。規制緩和の影響もあるけど、なにより上にびよーんと伸びてるミラーが「かっこわるい」かららしい。
最初見づらいなぁと思ったミラーだけど、軽く前傾したときに広めに見えるようにセットしておくと、腕を突っ張って直立に近い感じのとき以外ならちゃんと視認はできる。 ちょっとミラー遠いなぁとは思うけど。
サスは安いかなぁ……
サスは別に硬くはないのでがつこんがつこん突き上げられたりお尻が浮いたりはしないんだけど、さすがにサスは安い感じなのでがっこんなることもあるし、乗り心地は良くない。
最初、コーナーリング中に路面がうねってたりすると弾かれちゃったり、それ以外でも跳ねちゃったりすることが結構あったんだけど、これはサスが硬いというより底付きしちゃってる動きで、実際プリロードを締めたらだいぶマシになった。 私、結構体重あるからね。
基本的に腰よりはお尻が痛くなるタイプのバイクだけど、底付きすると腰が痛い。 この場合は骨折してもおかしくないからね……
マシになったというのはあくまで跳ねたりしなくなったというだけであって、あまり快適じゃない動きするのは変わらない。 まぁ、そのあたりは安いバイクだから仕方ない部分だね。 そこにこだわりを持つなら、オーリンズサスを搭載するような高級モデルを買うか、オーリンズサスを買うかしないと……
でもね、このバイクはオンリーワンな要素を結構持っているので、高級なリヤサスを入れるというのはマジメにアリだと思う。
今までだったら私はフロントサスにこだわるところなんだけど、このバイクの場合コーナリング性能を高めるより乗り心地を高めたいからリヤサスを交換したいかな。 パーツはナイトロンとマトリスから出てるみたい。 オーリンズ、YSS、K-Techからも出てるけど、日本には入ってない感じかな。
トライデントのサスはストローク足りてない感じがちょっとあって、動きも良くない。 プリロード締めて解決した「跳ねる」っていう症状は感覚的に言えば「サスが硬い」っていう言い方になるんだけど、実はこれはサスのちょっと難しいところ。
というのも、サスペンションというのはショックユニットのストロークを上から下までフルに使って走るのが理想的。 けれど実際は衝撃の大きさや、それがどれくらいの時間で発生したかによってストロークは大きく変わってしまう。だから、常に理想的とは行かず、いかに多くのシチュエーションを許容範囲に収めるかっていう話になる。 バネレートが高ければ大きな衝撃でもストロークは小さくなり、小さければ小さな衝撃でもストロークを使い切ってしまう。ダンピングが強ければ衝撃の時間を引き伸ばすことができ、弱ければ一気に伝える。
トライデントで乗っていて「ガコン!」ってくる衝撃があったり、コーナリング中に跳ねてしまったりするのは、サスペンションが硬すぎて動きが悪いからではなくて、ストロークを使い切って底付きしてしまっている症状だと思う。 なのでこれを解消するためにはサスペンションをより硬くする必要がある。
ショックユニットの交換は、スプリングレートが変わるってことと、減衰特性が変わるってことが特に大きい。 ストローク量は大きく変えられないから、限られたストロークをどう活かすかになってくる。
体重や使い方に合わせてスプリングレートを設定できれば、シチュエーションとマッチするようになって適切にストロークするようになる。 それに、ダンパーがスムーズに働くようになればきちんとストロークせずにガツンときちゃうってことも減る。
ストローク量は変えられないって言ったけど、トライデントのショックは単筒ド・カルボン式だと思われるんだけど、単筒ド・カルボン式は径は稼げるけど長さに制約が生まれるから、リザーバータンク付きにするとストローク自体伸びるかもしれない。 いや、構造的には伸ばせるはずなんだけど、リザーバータンクのない単筒のÖHLINS TR135のストロークが58mm(全長は305mm)で、リザーバータンクつきのTR136のストロークが58.5mm(全長は301mm)だから、そうでもないかもしれない。
フロントに関しては、現在の走行レベルではそんなに問題はない気がする。 もっとスムーズに動いてほしいとか、沈ませっぱなしにしたいとかはあるけど、別にやわすぎてふわふわするみたいなことはない。
タイヤ
トライデントのタイヤはミシュランのロード5。
ミシュランからは後継作としてロード6が出ているけど、2024年モデルでもロード5のまま。
このタイヤをほかのバイクに履いて走ったことはないし、トライデントに他のタイヤ履いたこともないから、このタイヤがどうっていうのは分からないし、トライデントのハンドリングとかもロード5込みでの判断になっちゃう。
ただ、多分なんだけど、絶妙。
ロード5はカテゴリーとしては「スポーツツーリングタイヤ」になるけど、トライデントに履けるタイヤとしては一番ツーリング寄りのタイヤ。
バイクの場合、クルマよりもタイヤへの性能要求が厳しい関係で、スポーツバイクに履けるエコタイヤみたいなやつは基本的にない。 なので、ロードスポーツバイクに履かせるタイヤはツーリングタイヤ寄りといってもそれなりにグリップ力の高いタイヤになるのがバイクタイヤ。
ロード5の場合、特にウェットグリップとロングライフが魅力。 スポーツ走行適性としては、軽いスポーツライディングは全然できて、サーキット走行もできるっちゃできるけど向いてないって感じ。
つまり、街中を走ったりツーリング行ったりするのがメインで、いくらかスポーティな走ったりするけどそれが目的にはならない感じ。
これがスポーツライディングが主体、たまにサーキットっていうパワー5だと、トライデントとしてはちょっと違うんじゃないかな。 もちろん、それはそれで楽しいとは思うけど、トライデントの位置づけを考えるとね。
ちなみに、もっとスポーティなバイクであるストリートトリプルRのタイヤは、コンチネンタル製コンチロードっていう、ロード5と同じようなポジションのタイヤを履いているけど、これはちょっと意外というか、キャラクター違うような気がするやつ。 さらにもっとスポーティなストリートトリプルRSはディアブロスーパーコルサっていう、サーキット走行メイン(自走でサーキットまで行ってサーキット走る使い方用)のタイヤを履いていて、落差がすごい。
快速!速度が出すぎて……ない?
ちょっと特徴的な点として、体感速度がある。 MT-09と感覚的には似ているから、MT-09の感覚で加速して、スロットル開度、回転数、ギアから認識すると「今90km/hくらいかな?」と感じるところでメーターを見ると45km/hしか出てない。 つまり、体感速度が倍、実速度が半分って感じで、だいたいどの速度域もそんな感じ。「思ったより全然スピードが出てない」っていうのは、250ccっぽい。
といっても、走行性能の高い大型バイクの基準での話であって、スロットル開度もとても小さく抑えている。なのでもちろん、もうちょっとアクセルを開ければ大型バイクらしい加速をする。というより、660ccという排気量からすれば速いくらいで、余力はたっぷりある。 MT-09みたいに、ちょっと手応えのあるところまでアクセル回すだけで大幅にオーバーシュートして、微開で繊細にコントロールする必要があるのと比べるとだいぶ扱いやすい。
スクリーンをつけなければ風当たりも当然とても強いので、自然に走った場合は市街地ではクルマと同じくらいの速度、高速道路ではそれより遅いくらいの速度になるので、肩肘張らずにのんびり走るのが良さそう。 大型なんだぞー! って速度出そうとするのはなんか違う。250ccくらいのシティバイク感覚で乗るほうがちょうどいい感じが出る。
250cc感覚で乗っていられるけど、実は余裕たっぷりっていう使い勝手。 私は「実用的には250cc最高なんだけど、ペース速い道や遠乗りは余裕なくてしんどいからそこは大型がいいんだよねぇ」って思ってるから、色んな面で250ccっぽい感覚の大型ってすごくいいなって思う。 あんまり速度出す気にならないのも良い。
そして大型の余裕なんだけど、50psや60psでトルクがあるから余裕あります程度の話ではなくて、81psあってちゃんと大型のパワーしてるのも良い。日常域なら600ccとしてはむしろ速いくらいだし。
すごくちょうどいいではあるんだけど、さすがに公道で全開で回しきれるほどじゃなくて、「遅い」って感じられるほど非力じゃない。 もちろん、人によってはもっと小さいスロットル開度で加速してほしいとか、回転数を上げなくても速く走ってほしいと思う人はいると思うけど。
低速得意 ≠ ジムカーナ得意
このバイクは低回転でもスムーズで扱いやすく、小旋回がものすごくやりやすいので低速得意なバイクではある。
けど、それはすなわちジムカーナ適性が高いというわけじゃない。
前提として、ジムカーナはタイム競技であり、「ミスなく走りきれること」と「完璧な走りをしたときの速さ」の両方を追い求める必要がある。 トライデントは扱いやすいから、初心者にとってはやりやすいし結果も出やすいバイクだと思うけれど、「戦闘力」という面だとちょっと難しい。
最大のポイントはマイルドなバイク特性。 トップシードの選手でも急すぎない動きのバイクを好む選手はいるけど、どちらかというとそういうのはテクニックで抑え込むから最大パフォーマンスが高いほうが良いっていう選手のほうが多い気がするので、あんまりトップ選手好みじゃないような気がする。
でもかなり速く走れそうな感じもあるから、ストリートトリプル以上の逸材である可能性もある。 好成績を狙うならサスがバタつきすぎるから、サスは交換することになるとは思うけど、素質はかなりある。
ハンドリングが軽くてハンドル切れ角もあり、タンクに干渉しないっていうのはいいところだし、なんなら2速使ったほうがいいかもしれないくらいにギアがショートなのも良い。 無改造でジムカーナするならすごくいいバイクだと思う。
ちょっと8の字をやってみた感じでは、めちゃくちゃやりやすいと感じたし、タイムも出せそうな感じはした。 回りやすさは250ccのバイク以上で、私が乗るなら成績もかなり出せる部類だと思う。
けど、本当に「勝つためのバイク」となるとまた話は違うんだよなぁって感じ。 ジムカーナで勝負するバイクは魔改造ありきな面があるから、素の適性が必ずしも関係ないところもあるしね。
まぁ、すごく迷うところではあるから、A級の選手に乗ってみてほしい気はする。 ひょっとしたらものすごい逸材かもしれないしね。
グラブバーとタンデムと積載
つけている人はあまりいないっぽいグラブバーだけど、私は積載したいのでつけた。 で、結論としては、タンデムしないならいらない。
というのも、まずフックをかける場所がレールとタンデムステップステーになるんだけど、レールの形状的にも安定しない。 というか、レールの安定する位置にかけると固定位置が前すぎる。
そしてそもそもタンデムシートが小さいので、固定するのが結構小さいバッグでもライディングポジションが圧迫されてしまうので厳しい。 小型のシートバッグでも前後長は30cmくらいあるけど、30cmだと私は「ギリ座れる」のレベル。 シート裏を使って固定するタイプなら多少ルーズにして後ろに押せるようにできるけど、それだったら別にグラブバーいらない。
グラブバーは硬い素材で張り出すから、またがるときの蹴り上げがだいぶ必要になる。私は何回か蹴っちゃって青痣作った。
じゃあタンデムするからグラブバーつけよう、って考える人は、絶対トライデント買う段階から考え直したほうがいい。
シート厚自体はあるから、座り心地は悪くないとは思うけど、そもそも小さすぎる上に傾斜がついてる普通に怖いタイプのシート。 それでもタンデムシート単体で座ると座れなくはないかなって思うけど、実はライダーのシートもあんまり長くない上にライディングポジションが結構後ろ目になるバイクだっていうのが関わってくる。
結果的にパッセンジャーはお尻不安定なちっちゃなシート(しかも後ろは切り落とされてる)に乗らなきゃいけないのに、ライダーが後ろに押してくる状態になる。
どうしてもトライデントの後ろに乗らなきゃいけない前提であれば、ライダーに押される関係上グラブバーを握れることにはかなり意味はあると思うけど、ふたりとも小柄でない限りは許容できるレベルにはならないと思う。
私が今まで知っているタンデム過酷バイクといえばビューエル・ライトニングだったけど、あれと同じようなレベルで厳しい。 間違いなくグースよりきつい。
トライデントでのタンデムは最初から諦めることを強くおすすめしたい。
グラブバーは結構張り出しがあってタンデムステップとの釣り合いがいいんだけど、いっそ思い切ってタンデムステップ外して構造変更しちゃうっていうのも手かもしれない。 そうするとリヤ周りに張り出すものがなくなってかなりすっきりすると思う。 私はタンデムステップにETCステーをつけてるから難しいけど、どのみちタンデムに適さないし、荷物固定にも使えないのでグラブバーもタンデムステップもいらない感強い。 タンデムステーは何も釣ってないので外すのはとても簡単。
荷物乗せはグラブバー使っても本当にどうにもならず、Amazonでもうまく乗せられそうなシートバッグが見つからなかったので、こちらもAliExpressで長さ28cmのシートバッグを購入した。LAICO BEAR製。 容量的にはヒップバッグより小さいくらいだけど、リュックから解放されるのには十分。 夏だとリュックは猛烈に暑いし、ロックを携行してると重いからね。
motocentric 11-mc-0102は長さは43cmと結構大きいバッグ。固定方法はストラップ2本。H型になっている画像もあったけど、私のはなってなかった。 容量は37Lとかなり大きめだから、数泊程度のツーリングにも使える。
motocentricは中国で有名なバイク用品みたい。
このバッグ、4色あるんだけど、グレー以外は立体的なゴムのロゴになってる。グレーは目立たないようにか、ただのプリント。なんとなく反射材っぽいけど、単なるグレーのプリント。 この37Lはこの方式で固定できるバッグとしては最大サイズに近くて、これより大きいバッグは基本的に固定する場所が必要な感じ。
37Lだと着替えくらいは入るけど、北海道ツーリングみたいに気温変化に対応するための装備が必要なツーリングや、キャンプツーリングみたいな機材が多いツーリングとかは無理。 そういうのは60L以上欲しい感じだけど、バイクに固定できない以上おっきなリュックで背負うしかなくて、かなり厳しい。 正直トライデントでは無理に近いと思う。
ところでこのバッグはめちゃくちゃ良くできていて、合理的だし、梱包も丁寧。 容量に関しては、拡張部分が内側ファスナー裏のところで折り返すようになっていて、この状態では止水フラップとして機能する。 これを伸びてしまわないようにベルトで引っ張ってるだけなので、簡単に調整できるベルトをゆるめるだけで容量拡張できる。
実は私はmotocentricのホルスターレッグバッグも持ってる。
他にヘンリービギンズのやつと、サイバトロンのやつを持ってるんだけど、どっちも長財布が入らないんだよね。 これは大きめの長財布でもギリ入る。 ただし、ファスナーのところよりも奥側のほうが高い構造で、ファスナー部分では深さが足りないから、入れた後奥に押し込んでからファスナーを閉める必要があり、微妙に惜しい。このせいで容量拡張の意味が薄いからなおさら惜しい。 でも、全体的にはめちゃくちゃ使いやすい。
カスタムして楽しむ
カスタム箇所は少なめで、純正オプションのクイックシフター、グラブバー、フレームプロテクター。 あとはスチールのまるっこいレバーが握りにくくて好きじゃないのでアルミのレバーに変えているのと、レバーガードをつけてる。本来はレバーガードはレースでの接近戦で間違ってブレーキレバーが他ライダーに触れて事故になるのを防ぐためのパーツなんだけど、この場合は転倒時のダメージ軽減のためのパーツとしてつけている。なので、クラッチ側にもついてる。
いろんな人が必須って言ってるクイックシフターことTSAは、個人的にはあんまりいらなかった装備。 いまいち挙動に安定性がないのと、私はもともとバックラッシュチェンジ7というテクニックを使っているからシフトチェンジのときにもともとクラッチほとんど切ってなくて、クイックシフターがあってもあんまり関係ないというのが理由。
現状唯一TSAが便利だなと思っているのは、発進後即座にシールドを調整したいとき。 個人的には停車中は上げておきたいし、40km/hまでにはデフロストポジションまで閉めたいので発進直後にシールドを丁寧に閉める操作をしたいんだけど、これだと左手は使えない。 40km/hで4速まで上げるのはバックラッシュでは難しいのでやっても2速までなんだけど、TSAを使えば上手に操作すれば4速まで上げることも可能なので、このときは便利。
ちなみに、TSAをdisabledにすると普通に戸惑うので、使ってないわけじゃないよ。
レバーはブレーキとクラッチのセットで4733円。 長さ調整可能だけど、短くしてると指がそもそもかからないレベルで短い。 一番長くしても短く持たないと小指がかからない。
ブレーキは握り込みやすくなって強くかけられるようになったし、コントロール性もかなり上がった。どれくらい握ってるかも分かりやすい。 一方でクラッチは短くなった分レバー比が下がって重くなった。正直、クラッチのほうはもともと困ってなかったから、変えなくてよかった感あるけど、まぁ見た目的にも揃えたいもんね。
レバーガードは左右セットで1325円。 実はこのパーツ、あんまり意味がない。 というのも、転倒時は回ってしまうし、そもそも触れるのは最も左右に出っ張ってるパーツなので、転倒時のガード効果は薄くて、レバーへのダメージを防げるかもしれないけど、それは結局運。 意味があるとしたら、接触で手が潰されるような状況で手を逃がす時間を作れること。
けど、私は実は高速道路の壁で指を削り取ったことがあるので、精神的安定のためにもつけておきたいパーツ。見た目はあんまり良くないかも。
このレバーガードはバーエンドに差し込む方式なんだけど、トライデントのバーエンドの内部パーツはグリップを外してウェイトを外す必要があって大変なので、ウェイト部分は取り付けずにバーエンドのガワだけ外して取り付けてる。
バーエンドを外した余り部分に違和感たっぷりだけど、純正のバーエンドミラーはこの余り部分に取り付けるようになってる。 バーエンドミラーをつけたら、違和感なく指を守れていいのかもしれないけど、私はバーエンドミラー好きじゃない……
トライアンフのフライスクリーンは、ライトとメーターユニットの間を埋めるプラパーツで、現行のストリートトリプルなんかはきれいに一体化するけど、トライデントの場合はとってつけたような板。 ただ、トライデントはライトユニットが少し低めにセットされていて、かつユニットは見やすいように高い位置に立ててセットされているので、前から見るとびよーんとした感じに見える。
フライスクリーンはこのライトユニットの裏側を流線型にするようなものなので、ライトの上側が却って目立つようになってしまうものの、スタイリッシュな形状になるとともに、気休め程度に空力特性を改善する。 純正部品は31321〜47134円とめっちゃ高い部品だけど、私が買ったAliExpressのやつは3882円と1/10くらいのお値段。
これくらいなら、「やっぱりないほうが良かった」と思ったら外しても気にならないレベル…… と思ったんだけど、フライスクリーン実は取り付けが結構大変で8、そんな気軽に外せるようなものではないっていうね。
高さはメーターより低いので、特にライダーに対する防風効果は感じない。 ただ整流効果はあるようで、高速道路の走行はかなり安定した。このバイクは外乱に弱いのでかなりの助かる。 また、燃費も少し良くなった。
他はどうか。
ブレーキカスタムを悩んでいたところだったけど、このレバー交換で十分強くかけられて、アプローチでのブレーキングコントロールも効くようになったからやらなくていいかなと思うようになった。 まぁどのみち、ブラケットとキャリパーで30万円とかだから、やるつもりもない。バイクのキャラクターを壊してしまうし。
リヤショックに関しては、プリロードで大きな問題はなくなったけど、乗り心地はよくないし動きもバタバタしてるから交換したい感じがする。 100万円のバイクに20万円の部品をつけるのは躊躇いがあるところだけど、その価値はあるバイクだと思うんだよね。
バイクのキャラクター的には前傾にしても面白いとは思う。 リゾマのセパハン風バーハンドルが使えるみたい。 でも、このバイクは体を起こしたときと伏せたときのちょうど良さとか、ハンドルの切りやすさとか、干渉のなさとか、メリットのいっぱいあるポジションなので、「飽きたときの味変」くらいの話。 本当にちょうどいいバイクなんだよね。
ちなみに、私は「足りないと思ったところを補う」ようにカスタムする派で、無条件にいじるみたいなことはしない。 今までだと、ファルコはラゲッジ、SVがステップとブレーキレバー、SSはマフラー(最初からついてた)、MT-09はエンジンガード、ブレーキマスター、レバーガード、ライト、ラゲッジ、電源アクセサリって感じ。
燃費
給油量 | 走行距離 | Km/L |
---|---|---|
9.59 | 176.4 | 18.39 |
10.73 | 198.1 | 18.46 |
7.97 | 167.8 | 21.05 |
6.97 | 153.0 | 21.95 |
8.76 | 177.9 | 20.31 |
8.62 | 132.4 | 15.36 |
6.20 | 122.6 | 19.77 |
8.52 | 182.0 | 21.36 |
9.56 | 205.3 | 21.47 |
5.47 | 95.7 | 17.50 |
10.35 | 218.1 | 21.07 |
16.91 | 373.9 | 22.70 |
7.44 | 141.0 | 18.95 |
11.07 | 238.4 | 21.54 |
15〜23km/L。
ちょっとしたことでかなり大きく変動しやすい。
空気抵抗のせいか、80km/hを越えると巡航時でも燃費は大きく落ちていく。 60〜80km/hで巡航できるのが、多分一番いい。
14Lタンクだけど、現実的に粘れるラインは11Lくらい。12Lまで使ってしまうととてもヒヤヒヤする。 だから、給油距離は200km以下と思っておいたほうがいい。 地方や山道のツーリングには携行缶が欲しいレベル。
スロットルをワイドオープンすると猛烈に燃費は悪化するので、人によっては12km/Lくらいまで落ちても不思議じゃない。
ワイルド vs マイルド
結局、トライデントはかなりスポーティなハンドリングを除けばマイルドなバイクなんだけど、マイルドがいいのかワイルドがいいのかってなかなか難しい問題。
スロットルがマイルドなのは、スロットルワークに神経をつかわなくていいし、路面のうねりとかで体を持っていかれても加減速で暴れたりしないからとても楽。 一方で明確な意思を持って操作するときは即座に反応してほしいと思うし、バイクの姿勢制御って意味でも反応がいいほうが簡単にできる。
回転数を高く保つようにすれば十分スポーティな走りができるだけのエンジンレスポンスを得られるんだけど、それでもいきなり飛び出すような動きをさせられるほどは鋭くない。 フロント持ち上げながら加速するような感じではないし、バンッと起き上がらせることも難しいので、好みにもよるけどスロットルビンビンなバイクが好きっていう人には合わないと思う。
それこそ初期型MT-09は反応がいいと同時に過剰に立ち上がりが急激ないわゆるドンツキ型だから、あれとは全然違う。
でも個人的には、スロットルの開け始めのコントロールが難しくないのはすごく助かる。スライドコントロールも楽だしね。 それに踏切渡るときにがっくんがっくんしないの素晴らしいね。 別に今どきの車両でクラッチ切ったからってエンストせんやろという気持ちなんだけど、だいたい上り下りがあってぼっこぼこの踏切をクラッチ切らずに1速で走りきれってそれのほうが危なくない? って気持ち。 RX-8だとかなりこわい。
ブレーキもマイルドなら神経使わなくていいけど、姿勢制御のことを考えたらリニアなブレーキシステムのほうがいい。 減速するときに関してはマイルドブレーキのほうが楽ちんでいいんだけど、旋回のためにブレーキ使うなら絶対リニアなブレーキがほしい。
ちなみに、マイルドブレーキが「効かない」ってことはない。 マイルドブレーキもぎゅーーって握れば普通に効く。 なんなら、最初にガツンと効きすぎてフロントフォークを底付きさせると減速力をうまく発生させられないから、問答無用でぎゅーーって握る前提ならマイルドブレーキのほうが効くまである。
でもね、リニアで効くブレーキって油断すると危ないの。 指一本でちょんってするだけでぎゅいーんって効くからね。 がくんっ!ってなって「ぁぅ」ってなることがよくある。 さらに、止まるときにちょっと力入ってもがっくんなるから「ぁぁぅ」ってなることがよくある。 トライデントのマイルドブレーキじゃそうならない。 でも止まるとき「ぎゅっ」てするとさすがになる。
標準のブレーキは曖昧すぎてコーナリングに使いにくかったけど、ブレーキレバー変えたらいい感じに立ち上がりのマイルドさとコントロール感覚が調和していい感じになった。 速く走るためなら絶対もっとリニアなブレーキがいいし、コーナリングのことだけを考えてももっとリニアなブレーキがいいけど、普段使いで疲れないっていう利点は捨てがたい。
ワイルドポジションとマイルドポジションでいくと、バイクを抑え込めるけどなんとなく乗ってると噛み合わない感じがするワイルドポジションに対して、自然に乗っていれば制御しやすいマイルドポジション。 アグレッシブな気持ちでいるときはワイルドポジションがいいけど、気張らずに乗るならマイルドポジションがいいよね。
トライデントは素晴らしい感じで両取りしてる。 街乗りで楽できるマイルドポジションでありながら、バイクを抑え込みながら走るのも難しくない感じ。 ポジション自由度もまあまあ高い。
バイクを積極的に楽しむワイルドバイクがいいのか、気張らずに楽しめるマイルドバイクがいいのか。 難しいよね。ワイルドバイクは怖いから無理っていうのでなければ、それってライダーのモードの違いだからさ。 ボタンひとつで変形でもしない限りどうにもならない。
で、トライアンフの場合、トライデントはマイルドバイクだけど、非常に近似のバイクとしてデイトナ660とストリートトリプルがいる。 ストリートトリプルはワイルドバイクだし、デイトナ660もわりかしワイルドっぽい。
じゃあトライデント乗ってて、デイトナかストトリにすればよかったなって思うかどうかなんだけども。
思うことがないわけじゃないけど、冷静に判断すればトライデントを選んだ私はナイスだったと思う。
今までの私はワイルドであればあるほどよい……というと完全に誤解されるのでちゃんと言うと、リニアリティをものすっごく大事にしてたから、マイルドであることは全く歓迎しなかったので、マイルドバイクを選ぶっていうのは結構な英断だったんだよね。
で、気負わずに乗れて体力的にも楽っていうのはいいなって思う。 もっともっとバイクに乗れる状態なら激しいバイクでもいいと思うんだけど、社会環境的にもがんがんバイクに乗れるような状況じゃないし、ライフスタイル変革を求められているのなら自然にそうなるようなバイクがいいと思うんだ。
それと、昔と比べるとかなり渋滞が激しくなっていて、以前なら日中でもまあまあ走れたルートでも、今はひたすら耐え耐えになっている。 激しいバイクは熱いって意味でも、神経質って意味でも、渋滞は辛い。トライデントが辛くないってことはないけど、比べれば全然楽。
時代の変化と、私がすっかり大人になってしまってることにうまく合っている気がする。
実際、今の私がやることってだいたい「散歩」で、その目的にはこの特性すごく合ってるんだよね。 信号待ちが多かったり、クルマについて走ったりするときもそこまで辛くないし、ちょっとコンビニに寄ったりするのも気軽だし。
トライデントの場合、「マイルドバイクは退屈」みたいなやつがないのも良い。 ハンドリングはなかなかチャレンジングなものだから「走りを楽しむ」っていうのもちゃんと成立するし、これがいい刺激になってる。
マイルドバイクの乗りやすさを求めると、結局パワー的にも必要十分ってことで250ccとかになるんだけど、250ccに引けを取らない扱いやすさ気軽さを持ちつつ、トライデントは普通に速いからね。 だから、マイルドバイクの弱いところを結構埋められてるっていう部分もある。
大人なアナタにマイルドバイク生活って感じ。
MT-09との比較
3気筒のミドルクラスのスポーツバイクってことで、トライデントとMT-09を比較する人が結構いるみたいだから、両方所有した私が簡単に比較してコメントしたいと思う。
私が前に乗っていた初期型のMT-09との比較になることを分かっておいてね。 MT-09は初期型はかなり乱暴かつ刺激的で、荒削りで未完成な感じがまた魅力、という感じだったけど、その後どんどん改良・洗練されていってより普通の「いいバイク」になったし、完成度が上がるとともに高級化したから、現在はもうすっかり別のバイクになってると思う。
まず前提として、両者は全く違うバイクだし、そもそもクラスが違う。
MT-09は速いバイクで、かつ刺激的な走りがウリ。エキスパートにフォーカスしたバイクであることが初期に説明されていた。
対してトライデントは速さはほどほどだし、全体的にマイルドなバイク。 初心者にとってのエントリーモデルとなる意図がある。
そして全体でも比べるバイクじゃないって感じ。
エンジンは同じ3気筒だけど、MT-09は荒々しく神経質な感じ。低回転域は安定しないので扱いづらく、思い切った大胆な操作で暴れるバイクをライダーが抑え込む感じ。 対してトライデントはとても滑らかで低回転からスムーズかつ力があって、素直で扱いやすい感じ。
MT-09は加速時にオーバーシュートさせないように加速するのはちょっと大変なエンジンになっていて、じわ開けが神経使う上に、普通に開けるとあまりに加速しすぎる。 逆にトライデントは操作感覚よりもスピードが上がらない感じで、明確な意思がないと飛ばせない。
MT-09はモタードとロードスポーツの間となる長めのサスストロークを持っていて、高さとサスストロークを駆使して走らせる感じ。 独特のヒラヒラ感があって、普通のロードスポーツの乗り方ではうまく御しきれない感じになっている。 対して、トライデントはごく普通の機敏なロードスポーツバイクって感じでクセがない。
初期型MT-09は落ち着きのないフロントサスが難点だったけど、これはマイナーチェンジ以降改善されたみたい。 ブレーキの効きは結構いいけどタッチはやや微妙だったけど、これも今は改善されてるのかな。 いずれにせよ、ちょっと調教不足な感じはあれど、攻めたり、あるいはエクストリームな動きをさせたりするのに適した仕上がり。 トライデントは全体的に尖った性能はない感じだけど、トータルバランスがすごくいいから「ちょうどいい」に満ちていて、普通のバイクとして普通に走らせるのに最適な感じ。
ツーリングは、MT-09はトライデントよりも乗り心地が悪い上に足つきも悪いけど、積載性はむしろちょっといいくらいなので比較しづらい。 タンデムは明らかにMT-09のほうがいい。トライデントはだいぶ無理気味。
MT-09は大胆にスロットルを開けて、加速を楽しむのがメインだから、全体的なキャラクターとしても飛ばすバイクなのが出ている。 対してトライデントはゆっくりとことこ走ったほうがキャラクターとしては合ってるから、本当に違う。
Vol.3へ続く
色々思いを巡らせるVol.3はこちら。