わたしとトライデント 〜1年後の物語〜
あれから1年
トライデントが納車されてから約1年。
つまり、ChatShowの記事の更新を忘れたまま約1年。
前のトライデントの記事はまだ慣らし中のものだったので、慣らしが終わってしっかり走ったあとでトライデントをどう見ているのか、という話をしていく。
前回の記事は物語が中心だったけれど、今回はトライデントというバイクの評価について。
基本構成のおさらい
| 車体寸法 | 202x795x1090mm |
| ホイールベース | 1400mm |
| キャスター角 | 24.9° |
| トレール量 | 107.3mm |
| シート高 | 805mm |
| エンジン型式 | 水冷並列3気筒DOHC4バルブ |
| 排気量 | 659.3cc |
| 最高出力 | 81PS@10250rpm |
| 最大トルク | 64N・m@6250rpm |
| 燃料タンク容量 | 14.4L |
| 燃料種類 | ハイオクガソリン |
| 変速機形式 | リターン式6段 |
| タイヤ前 | 120/70ZR17 (W) |
| タイヤ後 | 180/55ZR17 (W) |
| ヘッドライト形式 | LED |
| 車両重量 | 190kg |
| 定乗員数 | 2 |
イギリスのトライアンフが2020年にデビューさせた、ロードスタータイプのバイク。
従来ミドルクラスのロードスターモデルとして売られていたストリートトリプルと比べると、排気量が小さくて、出力も小さくて、シートも低い。 価格も大幅に安くて、トライアンフの中では初心者向けのエントリーモデルという位置づけ。 今は単気筒のスピード400があるけれど、その前は唯一の「最初のバイク」「最初のトライアンフ」向けだった。
コストダウンの意味もあるけれど、ブレーキは片押し式を採用していて、ちょっと曖昧な感じ。その分寛容なので、雑なブレーキ操作でがっくんしたり、ふっとんだりしづらいもの。 シングルスロットルボディでスロットルに対する反応もゆるいから、アクセルでふっとんじゃうことも抑えられてる。
兄弟車のデイトナ660はラジアルマウントの4ポットキャリパーに、気筒ごとにスロットルボディを持つ構造になっていて、同じエンジンを使ってはいるけれど結構しっかりキャラクター分けがされている感じ。
価格が本当に抑えられているので、日本車のライバルと比べてもお買い得感が高い。
ライバルはホンダ・CB650R、ヤマハ・MT-07/XSR700、カワサキ・Z650/Z650RS、スズキ・GSX-8Sといったところで、結構な激戦区。
どういうバイクだと思えばいいのか
ベーシックスポーツロードスター⋯⋯って言って伝わる人ばっかりじゃないもんね。
まず、普通の、特に尖ったところのないバイクが欲しいとするね。 スポーツとか速いとかはそんなに⋯⋯って感じで、街乗りオンリーじゃないから小さいバイクが欲しいわけでもないっていう感じの。 もしくは、まったり走るバイクが欲しいなーとか。
そしたらまぁ考えそうなバイクって言ったらまずトライアンフ・ボンネビルだよね。
もしくはW800。
でもこれが「普通」かって言われるとちょっと違う気がするよね。 ボンネビルとかW800は「レトロ」っていう明確な特徴がある。し、メッキパーツがキラキラしてて磨いて楽しむタイプだし。 求めてるのは普通であって、高級感あるレトロじゃない⋯⋯ってなる人は結構いるはず。それが付加価値になっていて結構高いしね。
じゃあそういう要素を削ぎ落とすと、スピードツイン900。
ボンネビルから特別なレトロ感の強調とか高級感とかを削ぎ落として普通のバイクにした感じだね。 うん、これは普通のバイクでいいと思う。
で、スピードツイン900を基準にして考えたときに、「もうちょっとスポーティな感じが欲しいな」とか「欲しいのは重厚さより軽快さなんだよね」って人。 そういう人が乗るべきバイクがトライデント660。
他の選択肢としてはMT-07だけど、トライデントのほうが「普通のバイク」感がある。 MT-07はちょっとサイバーな感じ。だからどっちを求めているのかは見た目で分かると思う。
Z650RSとかは、もっと本当に近いんだけどね。 Z650RSはがちライバルだと思う。 でもZ650RSはデザイン的にはSpeedTwin寄りだと思うから、やっぱり好みの違い出るかな?
基本的なキャラクター
「基本に忠実であることを求める」っていうのがトライデントの基本的なキャラクター。
ハンドリングはものすごく機敏で敏感。 ここでちゃんとセルフステアを妨げず、車体を2しっかりホールドすると簡単に、そして気持ちよく曲がってくれる。 ところが、ハンドルに体重をかけてしまうと二次旋回がとても弱くなってしまい、「敏感に曲がり始めるのにそこから外にふくらんでいく」っていう結構怖いハンドリングになる。 そして、うねった路面や凸凹のあるところでハンドルに体重かけていると激しいキックバックを発生させることがあってめちゃくちゃ怖い。
だからハンドルにしがみつくのは厳禁。 もちろん、それはバイク操縦の基本ではあるんだけど、初心者にとっては難しいこと。 「基本に忠実ならすごく素直」だけど「基本を守らないと手痛いしっぺ返し」っていうのは、初心者向きかどうかは判断の分かれるところ。 初心者にとって簡単ではないけど、初心者を育てるバイクではあると思う。
ちなみに、私はクルマの後ろでのんびり走っているときにキックバックで振り落とされそうになった。 路面のうねりがあるところでハンドルに体重かけてたからだけど、だいぶびっくりした。
スロットルに対する反応は鈍めではあるんだけど、サスが割と動きやすいこともあって丁寧な操作が求められる。 これも、基本に忠実であることを求められる感じ。
基本的なキャラクターの面では、ライダーがねじ伏せるというよりは、バイクに合わせて乗りこなしていくタイプ。
二面性
トライデントは最初3000rpm縛りがあって、この範疇で乗ってるとかなりゆるめの、いかにも街乗りバイクというキャラクターに思える。
けど、この「回転数」がすごい重要なファクターになってる。
3000rpm以下では本当に反応しないというか、とっても鈍感。 ニュートラルで素早くスロットルのオンオフを繰り返すと回転数ほとんど変わらないからね。
4000rpmを超えたあたりからバイクが動かしやすくなってきて、6000rpmを超えたあたりからはもうまるでストリートトリプルの(低回転の)ように右手に忠実な動きをするようになる。
実際に空ぶかしするとこんな感じ。低回転はものすごくラグいけど、4000rpmより上はまあまあ反応する。
ただ、メーターは11000rpmまでしかないから、伸びしろ少なめ。 回しきったことはないから、実際どこまで回るのかはしらなーい。 っていうのも、トライデントは割と音の大きいバイクなので音がしんどいし、パワーは十分にあるから特に必要性もないんだよね。 個人的には引っ張っても7500rpmくらいまで。実用的にはそれ以上はあまり必要ないくらいにはパワーがある。だって、660ccあるバイクだからね。 操縦性に関わる部分だと6000rpmを維持できるくらいで十分かな。
パワー伸び的にどうかって話をすると、660ccの大型だからね。 フルスロットルで上まで回したら怖いくらいには加速するけど、でもバカみたいに加速するバイクと比べると「伸びてるけどそんなでもない」だね。 だから、ここは何と比べるかによると思う。MT-09よりは平和。 だからなんというか、大型らしい速さはあるけど、ガチのスポーツバイクと比べたらだいぶマイルド、くらいな感じ。数値のまんまだね。
でも3000rpm以下は速い400ccのバイクよりもマイルドだからね。 250ccのバイクに近いくらい。 で、エンジンがマイルドすぎるせいでスロットルで車体制御が難しい。体で簡単に持っていけるほどは軽くないから、スロットルで制御できないと曲がりづらい。 だからリヤブレーキでなんとかするになる。 3000rpm以下でいうと、マイルドで乗りやすいバイクではあるけど曲がりやすいバイクではないね。
4000rpmを越えてからはスポーツバイクって感じ。きびきびしてる。 ただ、リヤサスが砕ける。リヤサスは替えたい。いや、体重のせいかもしれないけど。
ハンドリング
サスがなんとかなれば。
いや、ほんとそうなの。クイックに曲がるから街乗りでも便利。 ジムカーナ適性も思った以上に高くてくるくるまわれる。
バンク角もだいぶ深い。
だからストリートトリプルのノリでバーンと入って沈めつつスロットルばーんでクルッと回れそうな気がする。
気がするんだよ。
でもそれするとサスが底付きしてばーんって跳ね返されるから無理なんだよね。 だからちゃんと減速して小さく回るしかない。 体重の問題なのかもしれないけど、ちょっとそういうことができるレベルのサスではないと思う。やわらかすぎる。 いや、やわらかいっていうとしなやかに聞こえるかもしれないけど、そうじゃなくて踏ん張りがなさすぎる。
だからワインディングのペースは控えめに。 本当に路面のうねりに弱くて弾き飛ばされるから。
これさ、サス替えたらマジの神ハンドリングになるんじゃないかな。フロントはちゃんと荷重維持できれば沈めてられるから、リアの優先度が高いと思う。
やっぱりスパーダっぽい
乗ってると本当にスパーダを思い出すんだよね。 いや、スパーダよりは全然速いんだけど。
スパーダって、当時なかなかのスポーティなバイクだったけど、別に速さの頂点ではなかったんだよね。 もともとは「250ccはVツイン、400ccはV4」っていう思想があったんだけど、400ccはまだしも(VFRのほうがレーシーで、CBRのほうがストリートスポーツっぽさはあった)250ccのVツインはもうVTZの時点からすでに速さよりも扱いやすさとかに振ってたというか。
だから徒花呼ばわりされたりするわけだけど、扱いやすくて実用的、だけどスポーティって感じ。 当時もCBRでなくあえてスパーダを選ぶっていう動機があったはずなんだ。それこそ、もっと扱いやすいバイク、もっと日常的なバイクを求めてとか。 そのバランス感覚がトライデント660はとっても似てるのよ。あえてストリートトリプルではない理由っていうのも含めてね。
ツーリング
書き途中の記事になってしまってるけど、MotocentricのMC-0125というバッグを導入したことで荷物的には全然いけるようになった。
けど、積載しにくいっていうのは変わらないかな。
で、結構風に弱いというか、煽られる。 フライスクリーンでもここは特に改善しない。
お尻や手は痛くなりにくいほうだと思うんだけど、4時間くらい乗ってるとしびれて感覚がなくなるっていう問題がある。 しかも、しびれるところまでいっちゃうとなかなか感覚が回復しない。
だからやってもライトなツーリング向き、距離乗るならそれなりに休憩しながら走るって感じ。
だからツーリング向きではないかな。 特別つらいってわけではないけど、特に適性はないって意味で。
800のはなし
トライデント800が出るってよ!
ええーっと。 見るからにスポーティになったね。
タンクはカバーの範囲が変わってるだけで形は多分いっしょ。サイドカウルからシートにかけてが違うね。 アンダーカウルがついたのと、フライスクリーンが新しい。 シートがえぐりになったのは、足つきなのかな。シートレール自体が高くなったから、シート高は810mmで僅かに高くなったけど。
で、パワーが115psある。 660は81psだからね。キャラクターが違うね。
798ccでタイガースポーツのエンジンだね。パワーもいっしょ。 900/1200ccのタイガーはT-Plainだけど、800は違う。
値段もだいぶアップしてるし、明確にキャラクター違うと思う。 スピードツインも900と1200で全然違うらしいし、その感じかな。
ただ、ストリートトリプルとの差別化が難しそう。 これだけスポーティになると、まったりロードスターとしてのトライデント660の良さは求めにくいだろうし、ストリートトリプルRは765ccで120psだからパワー的には近いんだよね。 で、スポーティなバイクが欲しいならストリートトリプルRのほうがスポーティな仕立てだし、値段も近い。
んーーーー⋯⋯個人的にはあんまり惹かれない。 というのも、私はトライデントのデザイン本当に好きだけど、これはベーシックなロードスターとしての好きなんだよね。 ストリートトリプルみたいなバイクならストリートトリプルのデザインのほうがいいと思う。
あー、でもジムカーナ用としては、ストリートトリプルを超える逸材になる可能性はありそうかな。
これの本命はデイトナ800だと思うな。 デイトナ660もトライデントよりはスポーティな仕立てだけど、ちょっと非力な気はするし。
2026年型のはなし
2026年型、95psだってよ!
いやでも、トライデントのパワーが増えたら嬉しいかっていうとそうでもないなぁ。 実用上ちょうどいいのがメリットだし。
あとはABSとトラコンが進化。 うーん。トラコンはちょっといいなーって思うけど、垂涎ってほどじゃないかな。
至高の平和
トライデントは私が乗ってきたバイクの中ではダントツに平和なバイクなんだよね。 そして、今まで乗ったバイクはスパーダ以外はゆっくり走るのがかなり苦手。
スピード維持するの自体が楽かっていうのもあるし、クラッチなしでその速度を維持できるかっていうのもあるし、その回転数で痒くなったり痛くなったりしないかっていうのもある。 エンジンだけじゃなく、車体の安定性とかもあるね。
トライデントは23km/hあたりからが安定速度。27km/hくらいなら維持するのは楽。 クラッチなしで走れるのは14km/h以上。 渋滞時はしんどいけど、混雑くらいなら全然平気。
そして、低速走行は楽しくはないけど苦痛でもない。 パルスのあるバイクのほうが低速でも楽しいとは思うけど、そういうバイクって速度が安定しないんだよね。パルスで加減速を繰り返しちゃうから。 その意味でトライデントはものすっごく安定しているから、低速でも楽ではある。楽しくはないけど楽。
あんまりバイク側から楽しませてくる感じじゃないかな。そこがスピードツイン900との差だと思う。 トライデントは全然主張してこない。けど、動かしやすいから、楽しむための素材としては最高って感じ。 ライダー主体でバイクを楽しみたいんだ!ってことならすごくいい。
大型バイクエントリーモデルってことで初心者が乗ることを考えると、教習車と比べて簡単すぎてびっくりするかもね。
今の大型の教習車ってNC750Lよね? 乗ったことはあるけど、あのバイクはベーシックなロードスターではあるけど、個人的には結構しんどいんだよね。CB750Lのほうが簡単だった。 1510mmというロングホイールベースに27°のキャスターで、反応が鈍すぎて操作しにくい。スラロームもテンポ悪くてひっかけそう。 パワーが37psしかなくて、重量が228kgっていうのはいいとこだけど。
CB750Lの教習車は、240kgで出力は73ps。 キャスター角とホイールベースは記載がないけど、CB750と同じなら26.0°、1495mm。
トライデントのホイールベースは1401mm、キャスターは24.6°。車重は190kg。 めっちゃ軽いしくるくる回るよ。 簡単すぎて絶対教習車にはならないだろうなって感じ。 超簡単で有名なCB400SFの教習車もホイールベースは1440mmでキャスターは25.5°。車重は207kg。 つまり、400ccの教習車よりも身軽でクイック。 それは乗ってても感じる。さすがに定常円旋回はCB400SFのほうがやりやすいと思うけど。
まあ、大型教習は700cc以上じゃないといけないのでトライデント660は反則かもしれないけど、それなら800だったら……?
エンジン的には速いし、ある程度エンジンを回していればかなりスポーティな走りもできる。 けど、これに関しては前述の通りサスが踏ん張れないのとギャップに弱いから、あんまりヒートしないほうがいい感じになってる。 小さく回る動きは得意。スポーティな走りを楽しみたいならジムカーナ的な走りでって感じ。 さっきもいった通り、サスを変えればここもがらっと変わりそう。 路面に吸い付くような感じは全然ないんだよね。地に足がついてない感じ。
熱問題に関しては、今年は夏場に山手トンネルに行かなかったから問題はなかった。渋滞中も危険なレベルまでは上がらなかったね。
なんといっても混んでたらゆっくり走って、空いてきたら少しペースを上げて、っていうのが自由自在なのがいい。 肩肘張らないバイクライフにぴったり。
まとめだよ
ゆっくり走りやすくて乗りやすい。落ち着きをもった人には最高のバイク。 全体的にゆるめの反応が楽に乗りやすい。
バイク側から基本に忠実であることを強く要求してくる。特にハンドルに体重をかけないことを求められる。この点が、基本通りに乗ることを学べるから初心者向きとするか、基本ができてない人に厳しいから初心者には難しいかは見方次第。
少なくとも4500rpm以上、できれば6000rpm以上を維持すればなかなかに俊敏な動きができる。 でもサスが底付きして弾き飛ばされるっていう問題に遭遇するから、コーナーリングスピードを上げるのは無理。サスを変えたら世界が変わるかもしれない。
ツーリング適性は積載的にも走行的にも低い。
「ライダーとしてバイクを楽しむ」のにはうってつけの相棒感あるバイクだよ。
