RX-8に乗って1年になりました

#Idle

実は…

特にどこかで大々と話したことがなかったんだけど、2022年の誕生日前にRX-8というクルマを買ったの。

ちゃんとした形で「自分のクルマ」を持ったのは初めてだった。

誕生日の前週、なんとなーくクルマ欲しいなっていうのもあって、レンタカーでのドライブに中古車屋めぐりを入れてた。 買うつもりじゃなくて、「中古車どんなんあるか見てみよー。で、もし運命の出会いがあったら買っちゃおうかな」って感じだったのね。

つまり、そんなことありえないよ、って話だったの。 具体的には

  • 注目を浴びたり「ドヤァ」ってできるような車両で
  • MTで
  • 乗り出し100万円以下の
  • スポーツカーで
  • 運命感じたら

というやつ。具体的には、DS3とか、プレッソとか、サイノスとか、RX-8とか、ミトとか、ブレラとか、グランデプントとか。 「そんな都合のいい話」だよね。

それがあったのよ。

「見たことがないくらい」綺麗なRX-8、バシッとキマッたフルエアロ(というかボディキットが入ってて、ホイールも違う)。

綺麗なRX-8を見たことがない、というのはRX-8というクルマの問題。 RX-8はなぜか塗装が色あせやすくて、まぁ古いクルマだからヘッドライトもくすみやすい。 ダッシュボードがよく割れるクルマなんだけど、それもない。 なんでこんな綺麗なコンディションなのかまるでわかんない。

RX-8というクルマ (前夜)

RX-8は色々複雑な要素が絡んだクルマで、結果としては「変なクルマ」って話になっちゃう。

マツダには、ロータリーエンジンという、普通とは全然違うエンジンがある。 構造からして全然違う、夢のエンジンなのだけど、夢は夢のままというか、半ば机上の空論のようなエンジンだった。 マツダはそのロータリーエンジンの量産化を世界で初めて成功させ、「コスモスポーツ」というクルマに搭載した。 それが1967年のこと。

それから、ロータリーエンジンはマツダの象徴と言える存在だった。 多くのマツダ車の上級グレードに設定された「特別な」エンジンだけど、やがてロータリーエンジン搭載車は減っていった。

そして、ロータリーエンジンは最終的に、「スポーツカーのエンジン」になった。

1971年、5番目にロータリーエンジンが搭載された「サバンナ」は、ロータリーエンジン搭載車しか存在しないロータリーエンジン専用車であると同時に、純スポーツカーだった。 そして、1978年にサバンナRX-7というクルマが誕生する。これは、「2代目サバンナ」であると同時に、「初代RX-7」でもある。

これが「ロータリーピュアスポーツの系譜」であり、1985年に2代目RX-7、1991年に3代目RX-7と続いていく。

1970年代はクルマといえばオトコのマストアイテムって感じの扱いだし、バブル期になると「かっこいい流線型のスポーツクーペ」というのが一人前の男として扱われるマストアイテム(主に女性との関わりの中で)だったから、この頃というのは背が低くて流れるようなボディのクルマっていうのが結構多かった。 特にバブル期は「デートカー」なんて呼ばれる、セクシーな見た目がウリのクルマが多かった。

でも、RX-7はそんなクルマたちとは一線を画すピュアスポーツだった。 RX-7の見た目はもちろんスポーツカーらしい美しいものだけど、中身が硬派すぎる。 特に3代目のFD3S型は、走る以外の機能は削ぎ落として、快適性も扱いやすさも捨てて、ただただ鋭い走りだけを追求したようなクルマだった。 チャラチャラした気持ちじゃとても乗っていられない……というより、快適性が低すぎて、デートに使ったらフラレちゃうかもしれない。

こんな硬派なスポーツカーだった。

同時に、1995年に始まった頭文字Dという漫画は、1998年から始まってアニメで大ヒット。 幅広い層に見られるようになって、主人公が乗る古いスポーツカーのAE86型のスプリンタートレノは、それまでタダみたいな値段で売られていたのに、またたく間に価格が上昇。今ではものすごい値段で取引されている。

そして、FD3S型RX-7、そして2代目のFC3S型RX-7もそれぞれ主役級のキャラクターが乗るクルマだったから、ものすごい人気になった。 FD3S型RX-7は当時まだ新車で売られていたクルマなので、中古車の価格急騰にはすぐにはつながらなかったけど(今はものすごい値段だけど……)、あこがれと共に半ば神格化されてしまった。

マツダ RX-7 (2002)

そんなRX-7は2002年、惜しまれながら生産終了となって、RX-7というシリー1ズそのものが終わりを告げる。 そして、入れ替わるように発表されたのがRX-8で、2003年、発売となった。

RX-8というクルマ

RX-8は1999年にRX-EVOLVというクルマとして発表されたものが原型で、2001年にRX-8としてコンセプトカー展示された。

RX-7が終わることは分かっていたから、当然入れ替わりで出てくるRX-8が「RX-7の後継モデル」と見られていたんだけど、実際は初期からRX-8は「RX-7とは違う方向性のクルマ」だった。

この時点で批判はあった。 RX-7を支持する人たちは、より速さに磨きをかけたピュアスポーツカーを求めた。 ところが、RX-EVOLVはスポーツセダン、つまりは乗用車・ファミリーカーに寄ったクルマで、走り以外のすべてを投げ捨てたようなRX-7とは違い、使い勝手や実用性をしっかり備えたクルマだった。

これには裏事情が色々あったようで、諸説あり確かな情報は少ないけど、間違いなく言えるのは、当時親会社だったフォードの意向があったということ。 そして、「ドアが4つで、大人4人が乗れるクルマにしろ」という指示があったらしい。

この話は当時も漏れ聞こえてきたから、フォードの意向ということが気に食わない人も多かったし、「RX-7というスポーツカーが、フォードが茶々入れたから中途半端なよくわからんクルマになった」と怒る人も多かった。 さらにややこしいのは、マツダはRX-EVOLV以前にRX-01というクルマを展示していて、こちらはRX-7以上に走りに特化したピュアスポーツカーという方向性だった。これが次期RX-7になると期待した人は多かったし、「期待していたクルマが変な方向に転換した」とがっかりした人も多かったわけだ。

マツダ RX-8 (2003)

そんなふうに色々言われながら登場したRX-8は、やっぱり発売されてもそんな感じで色々言われ続けた。 今でも、駄作とか、妥協の産物とか、そんなふうに言う人は少なくない。

ただ、実際はちょっと話が違う。

RX-8は実際に、ドアが4つついてて、大人4人が乗れる。 ちなみに、RX-7も一応4人乗りだけど(2人乗りモデルもある)、後部座席は子供でさえかなり窮屈なレベル。大人が乗るのは相当つらい。

そして、小物入れを装備してたり、快適装備も充実してたり、運転もだいぶしやすくなってたり、電子制御が入ってかなり安全になってたりと、普通に使うクルマとして従来よりもかなり洗練された。

じゃあスポーツを捨てて実用に振ったのかというと、そうでもなくて、そりゃあ多少大きく、重くはなってしまったけれど、走りの面はFD3S型RX-7よりも磨き上げられてた。

エンジンを前に置けば別に大きくしなくても居住空間を広げることはできた。でも、スポーツカーとしての運動性能を高めるなら、エンジンはできるだけクルマの中心近く、つまり後ろのほうに置きたかった。 RX-8は少し大きくなった分、RX-7よりもさらにエンジンを後ろに搭載した。それほどまでに走りにこだわったクルマでもあった。

実際、中途半端というより万能というか、「ちゃんとスポーツカーしてるけど、実用性があるクルマでもある」みたいなクルマになった。これはいくつかの見方ができる。

例えば、普段は家族で乗るけど、一人で乗るときはスポーツカーがいいとかいう使い方ができるようになった。 あとは、RX-7で若い頃を過ごした人が結婚して家族ができて子供もいるから、RX-7みたいなスポーツカーはもう乗れない、でもスポーツカーがいい……っていう人に答えられるというか。

私は、RX-8は「RX-7が、ユーザーと一緒に大人になった」って感じがする。

世間の声にはその良さが理解されず、最後まで酷評されたRX-8だけど、実際にはRX-7よりいっぱい売れた。 実際にマツダに行った人が説明を聞いて、購入に至った割合がRX-7より高いのだと思う。RX-7は尖りすぎてるからね。

でも、その良さは結局一般に広く知られていないので、生産終了後、あんまり注目を集めてなかった。 一方、海外ではJDMと呼ばれる、「日本式の改造車」の人気があって、そのJDM車両としてRX-8も人気があったから、結構な数なRX-8が海外に流れた……らしい。

私が買ったRX-8はだいたい100万円。 一時期よりはちょっと高くなってはいるけど、FD3Sは500万円とかするのが当たり前になってしまっているから、まだ多くの人はその魅力に気づいてないみたい。

わたしから見たRX-8

RX-8は、私から見たら、うまく言えないけど、「常に頭の片隅にあるクルマ」みたいな感じ。

FD3S型RX-7が全盛の頃、私はスバルが好きで、憧れのクルマはGC8型のインプレッサWRXだった。

でもやがて、私は「FRスポーツカー」の魅力に気づく。 当時FRスポーツカーというと、RX-7のほかに、日産のシルビア、ホンダのS2000、トヨタのスープラがあった。 免許とれるようになったタイミングではギリギリでここらへんのクルマは買えるときだったけど、高校生に買えるはずもなし。 それに、当時は結婚を意識してたから、私自身は大人になろうとしてたんだよね。だから、レガシィみたいな、もうちょっと大人っぽいクルマを買おうと考えてた。

レガシィB4は私が考える「大人なクルマ」だった

そうしているうちに、スポーツカーはどんどんなくなっていって、ましてやFRのスポーツカーなんてなくなってしまった。 なかなかクルマを買う機会に恵まれなかったけど、私はどんなクルマがいいか考えることがあった。

やっぱり、かっこいいスポーツカーがいい。好みで言えば、FR車がいい。

あんまり大きいのや、重いのは好みじゃない。コンパクトで軽快感があるのがいい。

見掛け倒しじゃなくて、ちゃんとスポーツしててよく走り、楽しいクルマがいい。

でも、FRスポーツカーって結構不安定で危なかったりするから、電子制御でミスをフォローしてくれるようなクルマのほうがいい。

自分で運転してる感じの強い、機械的なクルマがいい。

もしかしたら人乗せるかもしれないし、荷物乗せるのに使いたいから4人乗りがいい。できたらちゃんと4人乗れたほうがいい。

それでマニュアルトランスミッションのクルマでなきゃやだ。

そんなふうに考えてた。 そしたら、トヨタ・86/スバル・BRZというクルマが発表された。

1190kgという軽量ボディに、200PSというそこそこのパワーのFRスポーツカー。 電子制御で安定の走りで、後ろは狭いけどちゃんと4人乗り。 まさに私が求める「理想のクルマ」。これだよこれ!

BRZはFRスポーツの復活

でも、なんだか既視感がよぎる。 あれ、こういうクルマ、前にもなかったっけ…?

……RX-8だ!

そう、RX-8は私の理想のクルマだった。 しかも、BRZと違って後部座席がちゃんと座れるサイズ。

「良さそうなクルマ」ぐらいにしか思ってなかったRX-8が、理想のクルマに昇格された。 完全に盲点だった。まるでラブコメで実は全然気にしてなかった幼馴染が理想の恋人だった的な。ちがうか。

でももう販売終了してる。 それから私は、「あー、RX-8いいなぁ」と思いながら過ごすようになった。

ちなみに、引っ越してからは近所に1台RX-8がいたので、毎日のように思うようになっちゃった。

私のRX-8

カスタムされた前期型

ボディキットでワイドなボディになっていて、カーボンのエアロでバシッとかためててほんとかっこいい。 フルエアロなんだけどリヤはウィングはノーマルのままディフューザーで稼いでるのもかっこいい。 スポーツキャタライザーとスポーツマフラーが入っていて、ホイールも社外品が入ってる。

わたしのRX-8

あと、ルーフが黒のツートンになってたりする。屋根が塗ってあるのね。

これで、「ローダウンされてて擦っちゃう」とか、「エンジンかけたら爆音」とかはノーサンキュー。 エアロで見た目としては下がってるから必要以上に下げない、アイドリング時はノーマルより静かってあたり、これメイクした人は私と気が合いそう!

わたしのRX-8

おっと……興奮してよくわからない話をしちゃったね。

高速で走るクルマにとって、空気は分厚い壁になる。 そして、この壁を切り裂きながら進むとき、空気はクルマを持ち上げようとする。 クルマを操作できるのは、地面に押し付けられたタイヤの力だから、クルマを持ち上げられるとなにもかも効かなくなる。

そこで、空気の抵抗を減らすと同時に、空気を逆にクルマを押し付ける力に変換しようとする。 このための装備が空力部品、エアロパーツ=エアロ。 これは同時に、装飾部品として使われることもある。

私はレーシングカーみたいなハデハデなエアロも割と好きなほうだけど、ただ大きなエアロパーツで空気で押し付けよう、みたいなのよりは、空気の力を上手に使おうみたいなほうが好き。

どうしても見た目の派手さもあって、後側にあるリヤウィングにおっきいのをバーン!てことが多いんだけど、私はこれは違うと思う。 普通のクルマで空力的には前側に欲しいから、エアロパーツは後ろより前が大事だと思う。 あと、前とか後ろとかピンポイントで効かすのはバランス悪いから、サイドエアロをしっかり活用すべきだと思うんだけど、みんなサイドエアロ軽視しすぎ!

でも、このRX-8はフロントとサイドのエアロパーツはバッチリ入っててかなり空力をきかせてるのに対して、リヤウィングはノーマル仕様。 しかも、この「ノーマル」は後期型のノーマルで、前期型にはついてなかったもの。 つまり、「後ろにノーマルのウィングがついてる」というのは、「特に触ってない」じゃなくて、「後ろにわざわざ後期型ノーマルのウィングをつけてる」ということ。 前とサイドでしっかり稼ぎ、リヤは軽くつけておく、という私の考えるエアロバランスと一致してる!

そして、クルマの運動性は下げたほうが良くなるけど、実際車高下げるといろんなところで地面とガリガリしちゃう。 だから、私はあんまり下げるの好きじゃないんだ。 見た目の話をするなら、このクルマは普通のボディの下側にエアロパーツついてるから、地面との隙間は減ってるしね。

で、このクルマ、少しは下げてあるんだけど、地面すれすれみたいにはなってなくて、あんまり気にしなくても大丈夫。 ちょっと高い段差とかは注意したほうがいいけど。 ここも好みと合うところ。

そして、爆音も好きじゃないから、アイドリング静かなのはポイント高い! けど!それでもうるさい! というか、低回転なら静かなだけで、回すと十分爆音ちゃん。 ちょっと交換したいかも……

とにかく、もし私がクルマを改造して自分好みにするならこうだな……というのが、最初から全部やってあるみたいな、好みに合う仕様ってこと。まるで、私のために作ってくれたみたいに。

難点は過走行だってこと。12万キロも走ってる!

私のRX-8は2006年登録だけど、3月登録で、2005年式。 前期とか、初期とか呼ばれるもの。実は初期型ってちょっと爆弾抱えた壊れやすいものだったりする。 まぁ12万キロも走ってるなら、対策部品に変えてあると思うけど。

まあ、RX-8なんてどの年式だろうが爆弾抱えてるものだけどね(古いクルマだし、特別故障が少ないクルマでもなかった)。

オーディオは時代なりのベター

さて、オーディオまわりは……

RX-8の車内 (カスタマイズ済み)

うん、ナビがないね。まぁ、当時モノのナビがあってもどうにもならないんだけど、実は当時のマツダ車(というか、今でも割とマツダ車はそうだけど)はパネルまわりが融通きかない作りになってて、「ナビがないからつけちゃおう!」とはいかないクセモノだったりする。

ケーブルでオーディオに入力するAUX inがあれば最新のデジタルオーディオをつないじゃおうとかもできるけど、そういうのも一切ない。この時期のマツダ車のオーディオやナビのカスタムはかなり手がかかる。

裏技的にデジタルオーディオをつなぐテクニックと部品もあるんだけど、どうもノイズが乗ったりと問題もあるみたいで、私はスーパーテクニックを駆使して! デジタルミュージックライブラリをCDにして、CDデッキで聴くことにした。

RX-8のオーディオって、すごく時代が出てる。まず基本の上半分がCDになってて、このCDが3種類ある。普通のCD、6枚のCDをまとめて入れて切り替えて流せるインダッシュCDチェンジャーつきのもの、MP3を入れたCDに対応したもの。 下半分はなにもナシか、カセットデッキか、MDデッキの3択。 そして、スピーカーが標準か、オプションのBOSEかの2択。

カセットやMDも時代を感じるけど、6連装インダッシュCDチェンジャーって、要はCDがいっぱい入って、入れ替えなくても連続再生できるよってことなんだけど、これでドヤッてたのがすごい時代を感じるよね。 一方で、MP3なんてまだ一般にはあまり馴染みがなかったけど、デジタルプレイヤーのほうは全然普及してなかったし、今までのデバイスを活かす形で、「CD-RにMP3のデータを焼いて再生する」という最先端のスタイル。 「CDをいっぱい入れる」っていう古いやり方と、「MP3」っていう新しいやり方が選べた。

私のは、MP3対応CD、BOSEスピーカー、という組み合わせ。

ちなみに、オーディオまわりは結構あやしくて、CDは取り出そうとするとちょっとだけCDが出てまた戻っちゃうし、ハンドルについてるリモートオーディオコントロールは全く効かない。 CDを素早くつまんで引き出す必要があったり、リモートオーディオコントロールは……もともと使わないからいっか。

また、オーディオはノーマルオーディオ(6スピーカー)とBOSEオーディオ(8スピーカー)がある。 私のはオプションのBOSEオーディオが搭載されたもの。それならいいサウンドだろう、と思うところなんだけど、あんまり良くない。 カーオーディオらしい、クルマ全体が鳴るような感覚はなく、フロントスピーカーから割とペラい音が鳴る。 RX-8、あまり良い音じゃないんだね。まあ90年代の安いクルマとかとは全然違って、ちゃんと聴ける音だけど。

当時私が新車で買えるとしたら、BOSEスピーカーは欲しいし、CDはMP3対応が一番いいと思ってたよね。 カセットとMDは別にいいかなって思う。だから、やっぱりこのクルマをメイクした人と私の好みは似てる。

ナビは普段なら「なくても」なんていうところなんだけど、実は引っ越した家はかなり道路がややこしくて、どこからの道から確実に帰れるともいえないような感じだから、ないとやばい。 そこで、ユピテルのポータブルナビを使うことにした。そこならバイクでも使えるしね。

内装はふつー

シートはファブリックのセミバケットシート、つまり標準のモデル。別に機能的に革が優れてるとも言い切れないので、好みが分かれるところ。レザーシートのほうが滑らないと思うんだけど、とても滑るレザーシートもあるらしい。 レザーシートは結構お高いオプションだったらしく(40万円くらい?)、あんまりつけてる車両はない印象だけど、限定モデルはそこまで高くないのにレザーシートがついていてお得感が強かったんだと思う。 個人的にはファブリックのシート、汗が染みて臭くなるのであんま好きじゃない。初日にめっちゃファブリーズした。

シートはそこそこホールド性があるもので、普通といっていいんじゃないかな。スポーティなシートって感じで、スポーツ走行に対応するようなシートではないけど、ホールド性は良い、ぐらいのもの。 レザーシートは形状は同じで素材が違うのと、電動パワーシートになる。ただ、メモリ機能がなくて、後席の乗降のために前席をスライドさせると(必須ではないけど)面倒という問題もあったみたい。あと、やはりかなり重いとか。

内装全体を見れば、年代相応と思っていいんじゃないかな。センターコンソールはおしゃれではあるんだけど、現代的なものとは全く違うのは確か。 ただ、エアコンの操作系とかは物理スイッチなので最近のより操作はしやすい。 ナビのついてない私のパネルの主役はディスプレイオーディオ。ボタン自体は押しやすいけど機能は大したことなく、選択によっては死んでる、わかりにくいボタンがいっぱい並んでる。 ちなみに、ほんっとにごく一時期しか使われていなかったCD-TEXT対応で、タイトルとかアーティストとか画面に出せる。1画面アルファベットで12文字だけど。

灰皿とシガーソケットがついていて、シガーライターはなく、かつ蓋されているのが時代を感じる。 最近はほとんどの場合灰皿もシガーライターもオプション。シガーソケットはあったりなかったり。あとシガーソケットはシガーライターに対応してないこともある。 一方、80年代とかのクルマだと灰皿とシガーライターはセンターパネルの特等席に居座ってる。 シガーソケットレスという仕様があり、蓋されて目立たなくなっていて、しかもアクセスしにくいところに配置されている、というのはその中間の時代のクルマの特徴。 なお、私はタバコは吸わないけど、ナビがシガーソケットを必要とするので蓋は開けっ放し。残念ながら見た目はあんまりよくない。 ちなみに、歴代オーナーもタバコは吸わなかったみたいで、灰皿の代わりに小物入れになってる。

ただ、時代を感じはしても、マツダがおしゃれになった以降に生まれてるクルマなのでそこそこおしゃれな仕上がりなので現代の目線でも「うわぁ」ってなったりはしない。 ステアリングの形状とアンバーのディスプレイオーディオが時代を強調してるかなぁ。 もちろん、ボタンいっぱいでゴテゴテしてるのもそうだけども。

サンバイザーは運転席・助手席ともにバニティミラーはついてるけど、前期型に関してはライトはついてない。 私のやつは純正のETC取り付けユニットがサンバイザー裏についてるんだけど、ETCは別のところに取り付けてある。 多分、お店の人が存在に気づかなかった。

内装切って取り付けるETC取り付けユニットがオプションで存在していて、チケットはさむところはどこにもない、という中途半端さが時代をちょっと感じる。 チケットの場所、割と困る。

私のとこにきてからの日々

最初のきもち

「コンクール用に大事にしまっておいたんじゃないか」ってくらいのピカピカで綺麗に仕上げられてて、それでいながらいっぱい走っていたRX-8。 「私がこんなクルマ、乗っちゃっていいの!?」っていう気持ちでいっぱいだった。買ったときも現実感なかったもん。

でも、RX-8としては寿命を迎えていてもおかしくない12万kmを走った、もう16年も経った老体。 私の気持ちは「大事に乗ります」だけ。

そもそもね、若い頃は「かっとばせー!」ってタイプだった私だって、大人になって、安全に走ること、リスクを減らすことの大事さを理解して、制限速度もちゃんと守って、同乗者にも周囲にも不快感を与えないように走ろうと心がけるタイプになった。 スポーツカーだから飛ばしたいとか、そういうのは特にない。むしろ、今のクルマみたいに剛性はなくて、運動性重視のつくりで、パワフルなエンジン。油断したり雑に扱ったりしたら、普通のクルマよりもずっとずっと危ない。

きれいで、かっこよくて、最高に楽しいスポーツカー。 大事に、できるだけ長く乗りたい。

納車されて8に触れて

土曜日に納車で、当日はまあおおよそ帰宅して、ちょっとだけ回ってきた、くらい。 なんといっても土砂降りだったからね。実は、私がクルマを運転するときってこの日まで全部雨で、土砂降りも多い。

五味ヤスタカさんがRX-8を絶賛してる動画(これこれ、ついでにこれ)でも言ってるけど、ドライバーが操作すべきもの、ハンドル、ペダル類、シフトレバー、ハンドブレーキが特等席に居座っていて、色々操作系が増えて奪い合いになっている現代と違って、プリミティブなスポーツカーだから走る機能を合理的に配置してるのを感じる。めっちゃ運転しやすい。 あと、メーターが見やすい。真ん中にでっかいタコがあって、そこにデジタルのスピードメーターがあるの、バイクっぽいけどとても見やすい。

足元が狭い、ということだけど、これは確かに初めて見たときはびっくりするくらい狭かった。 けど、実際に運転すると気にならないかな。ペダル間違えて踏んじゃうってこともなかったし。

パワーとギアはちょっと不思議というか。 そもそも、私のクルマはかなりカスタムされていて、どこがいじってあるかもわからないのでRX-8の「普通」なのかどうかはわからないけど、極低速(〜2000rpm)あたりは排気量相応というか、1300ccくらいのトルクしかない。 別に発進しづらいほど力がないわけじゃないけど、アクセルほとんど踏まなくても安定したアイドリング発進ができるほどトルクはない。だから、「普通」って感じ。 一方でエンジン自体は驚くほど鋭いから一瞬で吹け上がる。なので発進時どうしても回転を過剰に上げてしまいがちで、特に坂道発進はブンブン言わせちゃいやすい。 ところが、私のRX-8は排気系が変わっているので、アイドリング回転だとノーマルより静かだけど、2000rpmくらい回ってるとちょっと存在感のある音だし、3000rpmも回すとうるさい。4000rpm回ってるとめちゃくちゃうるさい。 だから2000rpmくらいに収めて走りたいんだけど(回すと迷惑だし、人目もひくし)、これがかなり難しい。ので、無駄にまわしてしまって迷惑をかけまくることに。 クラッチもそんなに丈夫なクルマじゃないので(クラッチは一度オーバーホールされてるらしいけど)、あんまりクラッチすり減らすような運転はしたくないんだけどね。

ギアは2速が使いづらい。2速に関しては平地でアクセルオフするとがっくんがっくんしちゃうんだよね。ほっとくと多分エンストする。2速が安定するくらいの回転だともう3速に入る。 がくがくしないギリギリの速度っていうと、2速17km/h, 3速24km/h, 4速38km/h, 5速52km/h, 6速83km/hってところ。 6速がかなりロングで、高速道路でも6速固定はあんまりしない。30km/h制限の道は激しい登りでなければ3速で、40km/h出るなら4速に上げる。5速に上げるのは60km/hでずっと走れるような状況だけ、6速に上げるのは100km/hでずっと走らせられるような状況だけで、3速と4速を切り替えながら走ることが多い。

気にしていた大きさ。実は初日にすごく狭いくねくね道で寄せすぎてホイールがりっちゃった。 心配していたほどではないけど、やっぱ幅があると運転大変だね。車両感覚もあまり得意じゃないし。

一方、ドライバー補助がないのは、意外と平気だった。視界がよくてボディがちゃんと見えるからかな。ミラー視界もいいし。 前方がよく見えて、大きく右にカーブしてるときも右の窓から先を見やすいので、とても良いと思う。 ピラーがちょうどみたい位置にあって隠れちゃうクルマとか結構あるからね。 ルームミラーは今まで体験したどのクルマよりも見やすい。非常にいい位置にあって、確認も容易。 ウィングは視界に入るけどそこまで気にはならない。 ただし、リヤワイパーはないので大雨の日は後ろが全然見えない。

RX-8は前席を高めにセットしているので、スポーツカー感は意外と薄い。 フロントウィンドウがすごく倒れてるなってくらいかな。 でも、姿勢がつらくないのは良いことだと思う。

ホイールも変わってるし、足回りはカスタムされてるせいもあるかもしれないけど、乗り心地は結構固め。 突き上げもあるけど、それよりも路面をめちゃくちゃ感じる。 でこぼこがあったとか、石が落ちてたとかわかる。慣れてない私にはちょっと怖い。 あと、ハンドルすごい取られる。これはひょっとしたら油圧パワステだからなのかな。電動パワステはそういう、路面のうねりとかを返さないようになってたりするのかなぁ。

すごい敏捷なクルマで、あんまり安定性がないからちょっと怖さはある。 でもすごいしっかりしたクルマだっていうのは感じるから、ハンドルを切ったときにビシーッと曲がっていくあたり、RX-8を信じれば踏んでいける仕上がり。 最近は衝突安全性の関係でどのクルマもものすごく丈夫なので、古いクルマはへにゃへにゃに感じやすいんだけど、えらいしっかりしてる。

あと、遮音性も高くて、外ですごい音してても気にならなかったり、救急車の音にすぐ気づかなかったりする。 そのせいもあって、音楽あまり大きい音で鳴らせない。危ないから。 私は窓ちょっとだけ開けて走ることが多かった。 ただ、遮音性は高くてもクルマから鳴る音、つまりエンジン音や駆動音、タイヤから出るロードノイズ、風切り音とかは室内に響くので全然静かじゃない。

乗り降りは、まぁまぁしづらい。特に降りるとき。 サイドシルに手をかければ割と楽だけど、ドアを開けるスペースがないと結構きつい。 前ドアが大きい作りだから、結構大きく開けないと乗り降りできないのも難点。

荷物はだいたい助手席に置くけど、後部座席に置くのも結構いい。 運転席から後部座席にアクセスするのはまぁ無理だけど、RX-8はリヤドアが開くので、バッグとかを置いとくと「降りたときに取る」でいける。 ただし、RX-8のリヤドアを開けるためには前ドアを開ける必要があって、なおかつ結構大きく開けないと厳しいため、停めた状況によってはリヤドアは開けられない。荷物を置く場合は注意が必要。 駐車場でも駐車スペースの外で乗降させるような工夫が必要だったりするほか、リヤの窓はほぼ開かない。 商用車みたいな開き方なので、後ろに乗ってる人が開けてちょっとだけ風を取り込めるだけ。

重量はそれなりに感じる。これは、ひらひら舞うような軽い身のこなしは感じないという意味で、逆に重たいなと感じる場面もほとんどない。 1310kgという重量自体普通だし、普通としか言いようがないかも。好みから言えばやっぱちょっと重すぎるけど、現代のクルマだったらかなり軽い部類だしね。

クラッチはちょっと重いかな? なれるまで時間がかかった。 シフトもすごい短いストロークで気持ちよく決まるめちゃくちゃいいものなんだけど、軽くはない。ついでに言うと、さすがにちょっとギアの入りが悪い。 ステアリングは「油圧パワステだから重い」とか言われてるんだけど、ここは全然感じない。私が重めのステアリングが好きだからかもしれないけど。ちょうどいいよ。 というか、最近のコンパクトカーの全然手応えのないステアリングはちょっと怖い。

燃費は…………まぁ………… だいたい、リッター6kmくらい? いじってあるから普通よりは悪いと思うけど、それにしてもハード。300km走って50L給油、購入時はだいたいハイオクがリッター177円で、1万円くらいが溶ける。 夜中だけ走って淡々と同じ速度で走れるような状態で使ってると8.5km/Lくらい行く。

でも、12万kmというと、どうしたって「エンジンの寿命間近」って感じになるのが問題なんだけど、エンジン絶好調だった。 エンジンがダメになってくると圧縮が下がって、温間時に始動しづらくなる。割と状態のいいRX-8でも、エンジンは割とかかりにくいのが当たり前。 それが一発始動なのよ。絶好調。多分エンジンもオーバーホールしてあるのかな。 すごい大事に乗ってた感じが出てる。

総合的には便利な機能はついてなくて、相応に難しいとこはあるけど、すごく手に馴染むクルマって感じかな。 色々不便はあるけど、こっちが合わせられないほどじゃない。基本的なところで運転しやすくて高性能だから、単純に機械としてのクルマとして考えれば素晴らしく乗りやすい。 「スポーツカーだ!」っていう興奮は乗っている間は意外とおとなしいものだけど、運転が楽しいクルマで、全体的に「丸く」性能が高くて優れたクルマ。 結局望んだ通りに、「普通に使えて、ほどよくプリミティブで、機械としてのクルマの運転を楽しめるスポーツカー」になってる。

マジモンのスポーツカーに乗る

正直、住んでいるところの道路事情があまり良くなくて、どこへ行くにも結構な時間がかかる。 どちらかというとクルマを持ちにくい地域だと思う。 移動しやすい幹線道路への接続が悪くて、ほとんど住宅街か、渋滞かという感じ。 駅チカでもないのでクルマの所持率は高そうなんだけど、みんなそんなに使わないんじゃないかなぁ。 走っててしんどいし、近くの買い物に使うと時間的には徒歩と変わんないから。

もともと買い物とかの実用的な意味でクルマがほしかったんだけど、思った以上に走りづらくて、「買い物なら原二だったなぁ」と思ったくらい。 もっとも、軽装で乗るならともかく、ちゃんと装備すると装備着るにも脱ぐにも30分って感じだから、割り切らないと成立しないけど……

また、納車が梅雨時だったこともあって、走って楽しむ、という感じにはなかなかならなかった。 二日目は晴れたので、ちょっと写真撮りにいったけどね。

あと、やっぱり音が大きいのは、夜も走りづらいし、どこ行っても気を遣うし、私は苦手。 がんばればある程度静かに走れるけど、そのために神経を使うクルマではある。 けど、トータルで仕上がってる(ECU変わってる、ちゃんと燃調とかも詰めてあると思う)から静かにするってわけにもいかない。

でもやっぱり、しっかりした走りの、マニュアルのスポーツカー。「クルマを動かしてる」って実感があって、単に動かすことだけでも楽しい。 さすがに渋滞の住宅街なんかは「しんどい」がまさってしまうので、「楽しい、でもしんどい」でもやもや。

私は購入当初、そんなに走らないと思ってたし、だから保険も3000kmで契約してたんだけど、結局月1000kmくらいのペースで乗っちゃってた。 RX-8というクルマに慣れるまで、2000kmくらいかかった。その間はエイトワーがあるといっても、低回転で走るとほんとにコンパクトカーにも負けそうな感じでしかない。 気持ちよく乗りたかったら3500rpmくらいで上げるといいんだけど、うるさいのいやだから2500rpmくらいで上げるとガクガクしちゃう。坂道発進でうるさくならないようにと思うと簡単にエンストする。

クルマは俊敏さを重視したのか、安定感はそんなになくて、すごくよく動く。 いっそ落ち着きがないと言っていいくらい。ハンドルも取られやすいし、運転には集中力が必要。

ちょっとハンドルを切ればスッ頭が入るというハンドリングは、スピードを上げるセッティングって感じ。 「スポーティ」とかいう次元じゃなくて、サーキットでタイム出すためのガチガチのマジモンのスポーツカーの動き。 楽しいけど疲れるし、家族連れてドライブぅーみたいなライトな気持ちで乗るにはちょっときつい。走りの素性は真ん中寄せじゃなくて完全にスポーツに寄ってる。

サーキット向けのショップでお世話になってたみたいだし、「街乗りを犠牲にせず、タイムが出せる走行ポテンシャルを高める」という方向で、入念に煮詰めていった車両なんじゃないかな。しかも、それでストレスがかかることを前提としてすごく丁寧にメンテナンスされてた。

いろんな制約の中で可能な限り性能(=タイム)を出すって感じだから、高級スポーツカーとかにある「余裕綽々」みたいな感じが全然ない。 しっかりした車体とサスに電子制御まで入ってるから、ロードスターみたいな「低速からダイナミックな動きを感じられる」みたいなクルマじゃないけど、機敏に動くから「動かして楽しい」ではあるし、機敏すぎてペースが上がるとちょっと怖いから楽しみやすいクルマでもあった。

意外と大きいクルマで、あんまり地面擦っちゃったりしないようにはなってるけど気は遣う(歩道の段差とか、立体駐車場とかはちょっと危ない)ということもあって、最初はなかなか出せなかった。夜中にちょっとドライブするくらい。それでも怖い。

でも、そんな夜中のドライブと、あと峠道もちょっと走ったりして、少しずつクルマに慣れた。 スムーズにシフトチェンジできて、走行位置も安定して、エンストもしなくて、ちゃんと余裕をもって周囲を確認できる、という感じになるまで2000kmほどかかった。 その状態になってからようやっと、お買い物にも割と出せるようになった。

夜にいっぱい走って練習した
安定して走れるようになるまで4000kmくらい

それからの1年――私のエイト

このクルマが私の手元にある生活、想像以上に素晴らしいものだった。

「予定よりはたくさん乗ったけど、思ったよりは乗らなかった」というのは私の気持ち。 何よりガソリン代がえげつないクルマなので自制したし、平日は仕事もあるからそんなに乗る機会がない。 夏場は体力的な問題もあって、買い物は常時クルマだったけど、冬場はそうでもない。

だいたい、「月に1度ガソリンを入れる」って感覚で乗ってた。300〜400kmくらい。 でもついつい乗っちゃったりするけど、更新した保険の距離、年間10000kmにはさすがに届かなかった。

バイクを手放した状態でコロナがやってきて、否応なく引きこもるしかなかった。 本当に全然家から出ないで、生活圏から離れることは年に1, 2度くらい。

SAに停めても存在感はすごい

でもエイトがあれば違う。エイトが来てから私はいろんなところに気軽に出かけるようになった。 食べるものもコンビニとマクドナルドという不健康ワンパターンから抜け出したし、私のエリアそのものが広がった。 地元の地理もだいぶ把握できた。

少しずつ道を開拓し、ルートを開拓し、エリアを開拓してく。 あんまり混まない道、走りやすい道を見つけてドライブルートを構築して、鬱屈しちゃうとき、自分を見失いそうなときにエイトを出してリセットできるようになった。

静岡まで気ままにドライブ

専用のツールを書いて、CDを焼いて、アンビエントライトつけて、ドラレコつけて、エンジンカバーつけて、少しずつエイトも私色になる。 ミスってこすっちゃったのは悲しいけど、まぁ歴史のうちだと思っておくよ。

低速が気難しいNAロータリーエンジンにも慣れて、2250rpmシフトという修行のような操作も難なくこなせるようになった。 重いと感じていたクラッチにもシフトにも慣れた。でも、長時間運転した翌日は足と肩が痛いから、シフトもクラッチもハンドルもやっぱ重いんだなって感じたりする。

想像してみてよ。

窓から最高にかっこいいスポーツカーが見えるんだ。 それは自分のクルマで、気分次第でいつでも乗ることができる。 そのスポーツカーはじっと自分のことを待っている。

新年の記念撮影

想像してみてよ。

ドアを開けて、潜り込むように乗り込んだら、そこは運転するために特化した、包まれるようなコックピット。 キーを挿して一捻りしたら、いかにも走りそうなやる気のある音がするんだ。

クラッチを踏んで、ギアを入れて。最近のクルマじゃなかなかない面倒な操作。 アクセルの具合を探って、慎重にクラッチをつないでゆっくり動き出す。最近のクルマじゃこんな頭使って走らない。 でも、そのひとつひとつの操作が確かにクルマの動きにつながってるのがわかる。

ごく稀に日中、大黒に行ってみたり

想像してみてよ。

確かな重さと感触を伝えるハンドルをしっかり握って、クルマと対話しながら動かす。 優しく、迷惑にならないように。左足と、左手でしっかりと抑えつける。 前のクルマが何をしようとしてるのか、信号はいつ変わるのか、その時自分はどこにいるのか、だから自分はどう操作するべきなのか。 しっかり先を読みながら動かしていく。なめらかに。

だけど、これはマジモンのスポーツカーだよ?

その力を解き放てば、並大抵のクルマじゃとても敵わない。 そしてなにより、私はそのカーブ、減速なんかしなくたって駆け抜けられるけど、マネしたら事故っちゃうよ? 命知らずが心臓縮こまらせて飛び込まなきゃこのスピードで曲がれやしないと思うかもしれないけど――スポーツカーは曲がるんだよ。普通に、ね。

アクセルを踏めば即座に加速する。ハンドルを切れば忠実に曲がる。ブレーキをかければ速やかに減速する。 そのひとつひとつを自分がやってるんだって、確かな実感を伝えてくれる。

私が、この最高にカッコイイエイトのマスターで、私がこのエイトを動かしてる。

もっともっと走りたい。もっと遠くへ。 一日中走ってもまだ足りない。 このエイトなら、私が見たことのない世界へ連れてってくれる。 もやもやしたことも忘れて、もう一度挑戦する力をくれる。

実際に速さを堪能することはほとんどない

そんな日々をくれるクルマなんだ。

現実問題として、実はかなりお金がかかる。 駐車場は安いほうだと思うんだけど、駐車場と保険と、その他もろもろ発生するお金だけで年間25万円くらいかかって、ガソリン代が24万円くらいかかって、高速代も何万円かかかって、2年に一度の車検も普通のクルマよりだいぶかかる。 元の取れない高い趣味だわ。

けど、エイトと過ごす日々は、その費用も価値がある。 これほどまでに日々が大きく変わるなら、がんばっちゃっても悪くない。

なによりもこのエイト、本当に私の好みと一致してて、逆に困っちゃう。 だって、最初に乗るのがこんな完璧なクルマでさ、次どうするよ? このクルマはもう先がそんなに長くないのに、違うクルマに乗ったら「エイトのほうが良かったなぁ」ってなっちゃう。

こんなによく走って、楽しくて、使いやすいクルマ他にある???

このクルマ以上に私が求めるクルマが思いつかないよ。 めちゃくちゃ楽しいし、本当によく馴染む。

問題は過走行の老体、大丈夫なのかってことだけど……

車検を間近に控えた4月、車両トラブルで入院した。 ガソリン入れにいったら、ガコン!てすごい音がして、なんか、走るとガタゴトガタゴト異音がする! 普通に走れそうな感じもあるけど、変な振動もある。

どういうことー!? となって、ロードサービスを使ってショップに搬送。原因特定にはちょっと時間がかかったけど……

その原因、なんと、「エンジンマウントが折れた」。

聞いたことないよそんなトラブル……

意外とお安く復活。 復活したらなんかめっちゃ調子よくなった。

そうして今も走り続けてる。

私のこのクルマ、走れなくなるまで乗りたいと思ってる。

ちょっと困るのは…… あまりに理想的すぎて、次に乗るクルマに困っちゃうことかな……

私の、理想のクルマです。

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