VAD506をTD-50X+VH-14Dにアップグレード

#Sound

踏み切った

タイトルの通りで、今までVAD506にCY-5を追加したセットで半年ほど使ってきたけど、VH-14Dがあまりに魅力的だったのでVH-10をVH-14Dに交換、 さらにTD-50Xのほうは悩んだけど、実際に両方で音作りをした上で比べた(店頭に両方あったので、並べて試した)ところ相当違ったので、結局TD-50Xも導入した。

TD-50XとVH-14DでアップグレードされたVAD506

概要説明

Rolandの電子ドラム V-Drums/VAD

VAD506は日本の楽器メーカー、Rolandの電子ドラム。 電子ドラムの世界ではRolandが最も先を行っているメーカーで、電子ドラムといえばRoland。 結構長い間「RoalndとYAMAHA」だったんだけど、YAMAHAはあまり電子ドラムに熱心でなく、更新しないし、そもそも世界のトレンドに乗らずに独自路線を走ってるのでトップメーカーとは言い難くなっている。シェア的にも。

勘違いしないで欲しいのだけど、YAMAHAは「ドラムをわかってない」って話ではない。Rolandと違ってYAMAHAはアコースティックドラムもやっているメーカーであり、アコースティックドラムはちょっと変わったところはあるけれど、いい製品をラインナップするメーカー。 実際、私もYAMAHAのキックペダル使ってるわけだし。 ただ、なぜか電子ドラムのことはあんまりわかってないような感じになってしまっている。

電子ドラム、そんなに選択肢はなくて、日本だとRolandとYAMAHA、高級機メインのATV、格安製品のAlesis、フラッグシップクラスの1モデルのみが存在するPearlとKORGのコラボ(製品名はe/Merge)というところ。あとは、おもちゃみたいなPlaytechとか。

世界的にはEFNOTE, GEWA, Pearlとかもある。

ATVのaDrumsとか、e/Mergeとか、なんかすごい魅力的っぽいモデルが出たこともあるんだけど、2017年のTD-17を皮切りとしてTD-27, TD-07, TD-50Xが出た今、完全に電子ドラムはRolandだよね、に戻ってしまった。戻ったというか、その前は「いやいやYAMAHAでしょ」って派閥は結構説得量を持ってたから、むしろここまでRolandが絶対間違いない、みたいになったことは過去ないかも。

電子ドラムはシンセサイザー(というかサウンドプロセッサ)である「音源モジュール」と、センサーを持つ打面であるパッドからなる。 まぁ、より正確にはセンサーに関してはパッドである必要はなくて、適当なモノに挟んでドラム化できるセンサーとか、アコースティックドラムを電子化する非接触センサーとかもあったりするんだけど、普通はパッド、という理解でいい。

Rolandの電子ドラムは「V-Drums」という製品名で、音源モジュールとパッド/センサーそれぞれが単独で販売されている。 また、全部セットになった「キット」の販売もある。ドラムは単品販売とセット販売があるのが普通だから、その意味でもまぁドラムらしい売り方かも。 違いは「音源モジュール」という部品があることだね。

V-Drums 音源モジュールとラインナップ

TD-50XモジュールはV-Drumsの頂点

V-Drumsの音源モジュールは「TD」という名前がつけられている。 現行製品は下からTD-1, TD-07, TD-17, TD-27, TD-50Xになる。

キットは音源モジュールをベースに作られていて、音源モジュールの名前が入っている。 例えばTD-17を使ったキットはTD-17KV、そしてその上位版(パッドが豪華なやつ)がTD-17KVX。 TD-50XはXという名前はついてなくて、TD-50K2とTD-50KV2のふたつ。

キット製品も上位モジュールを使うものは良いパッドを使う傾向になってる。

ちなみに、組み合わせの自由度はそんなにはなくて、ある程度決まった範囲でしか組み合わせられない。 ATVはもともとRolandにいた人が作ったメーカーで、ある程度組み合わせられるけど、基本的にメーカーを越えた組み合わせは無謀。 ATVとRolandの組み合わせも、aD5という音源モジュールとRolandのパッドの組み合わせは最初から想定されているので大丈夫なんだけど、それ意外はちょっといまいちな面があるらしい。

音源モジュールについてもう少し説明すると、TD-07, TD-17, TD-27はTD-50というRolandのトップモデルのファミリーになる。 基本的にTD-50を基本として、その設計や音を廉価なモデルに落とし込んだ、という形。 TD-1に関してはHD-1→HD-3→TD-1となったもので、世代的にはTD-30なんだけど、特にTD-30を継承はしていなくて、単純に安物シンセモジュール。 TD-50Xはつい最近発売された、TD-50の後継モデル。ハードウェアは変更ほとんどなしで、ソフトウェア的に改良された。

グレードごとの流れを見るとこう

  • HD-1 → HD-3 → TD-1 → (TD-07)
  • TD-3 → TD-4 → TD-11 → TD-17
  • TD-5 → TD-6 → TD-6V → TD-9 → TD-9 v2 → TD-15 → TD-25 → TD-27
  • TD-8 → TD-12 → TD-30…
  • TD-7 → TD-10 → TD-10+TDW-1 → TD-20 → TD-30 → TD-50 → TD-50X

TD-12とTD-20は同時期に販売されていた製品で、比較するとTD-20のほうが上位製品だったけど、TD-30に統合された。 また、TD-1はHD-1から始まるおもちゃみたいなV-Drumsの系譜になるのだけど、TD-1の場合おもちゃみたいなV-Drums(子供向けと言ってもいいかも)から入門用という位置づけに少しシフトした感じがあって(その意味ではHD-1とHD-3もだいぶ違う)、TD-07はTD-50を継承したモジュールが載っているので、エントリークラスといってもだいぶ本格的な感じが強い。実際、今のところTD-1のような超コンパクトなキットはなく、価格的にもTD-1よりだいぶ高い。実際、そのためにTD-1とTD-07は併売になっているので、TD-1とTD-17の間に新しくできたモデルと見ることもできる。

なお、TD-1とTD-07は音源モジュール単品販売はなしでキットのみ。あと、アコースティックドラムにシンセサウンドをプラスする前提のモジュールとしてTMシリーズが3製品ほどある。

各グレードの位置づけを見るとこう。

  • TD-1 : 子供向けおもちゃ・超コンパクト(TD-1K)・入門用・ポータブル(TD-1KPX)
  • TD-07 : ドラム、電子ドラムの入門向け
  • TD-17 : ビギナー向け・練習用
  • TD-27 : スタンダードモデル・ライブ・レコーディング向け・練習用
  • TD-50X : ハイレベルなライブ・レコーディング向け・練習ツール

V-Drumsはすべてのモデルに練習という言葉が含まれている。ただ、最も練習にフォーカスしているのはTD-17シリーズで、「スキルアップのためのモデル」という位置づけになっている。 TD-1とTD-07は「初めてドラムに触る人」や「昔ドラムを叩いたことがある人」にフォーカスしていて、練習用というのは「叩ける環境がある」という意味と等しい。実際、「ドラムがうまくなりたい」というモチベーションがあるなら、TD-17を選択したほうがいい。 TD-27に関してはもう「練習」ではなく、「演奏」にフォーカスしている。サウンドをメイクし、それを奏でる道具。つまり、既に演奏できる前提で、レコーディングなりライブなりでそれを発揮するというのがメインで、そのレベルの人の日々の練習という意味になっている。TD-50Xも基本的に同様だけれど、より本格的な音作り、PAを介したライブなど想定するレベルが上がっている。

VADは「アコースティックのような電子ドラム」

さて、V-Drumsについてはだいたい分かったかな? じゃあVADの話をしよう。

VAD(V-Drums Acostic Design)はV-Drumsとは別のシリーズとしてラインナップされているもので、V-Drumsの音源モジュールと、アコースティックドラムさながらのパッドを組み合わせたシリーズになる。 最初に登場したのは、TD-17を使うVAD306、TD-27を使うVAD503/506。 さらに最近、TD-50Xを使うVAD706、TD-07を使うVAD103(日本未発売)が追加された。

VAD306/VAD103はちっちゃめだから違和感あるだろうけど、VAD503/506/706に関しては詳しくない人にはアコースティックドラムにしか見えないと思う。 見えない、というか、そもそも太鼓部分に関してはアコースティックドラムそのもので、表面だけセンサーつきパッドになっているようなもの。 単に見た目だけの話じゃなくて、演奏感・打感もV-drumsキットよりずっと良いものになっている。

VH-14D デジタルハイハット

USB接続のVH-14D(左)とVH-10

VH-14DはTD-50Xのキット用に登場した新しいハイハット。 ハイハットっていうのは、だいたいドラマーの左手にあって、チキチキとリズムを刻むやつ。 2枚のシンバルが組み合わせられているので、ものすごく繊細でいろんな音が出せる。けど、つまりそれは電子ドラムでは最も再現するのが難しい部分ということでもある。

この新しいハイハット最大のポイントは、USB接続になったこと。 Rolandの音源モジュールは接続が6.3mm 3極プラグ(いわゆるTRSフォン)になっていて、検知できる信号は結構限られていた。2種類のアナログ信号を送ることしかできないし、基本的には叩くことで発生する電気信号をそのまま送るだけだからね。

これがUSB接続になったことで、USBの速度の範囲ならどんな情報でも送れるようになった。 これがすごく大きい。 Rolandのパッドとしてはスネアドラム、ライドシンバルに続く第三のUSBパッドだけど、もともとUSB端子はTD-50/TD-27/TD-50Xいずれも3つなので、これでUSBパッドがひとまず出揃ったってことになる。

スネアもライドもめっちゃ良い、USBでないと出ない優れたフィーリングなんだけど、これがハイハットになると前述のとおりすごく複雑な情報を必要とするから(これまでもハイハットは6.3mmケーブル2本を使う仕様だった)、その違いは非常に大きい。というより、今までの常識から言えばとても考えられないくらい良くなった。

このVH-14DはTD-27やTD-50でも使うことができるけど、フル性能を引き出すにはTD-50Xが必要。

お値段…あれ?

VAD506にTD-50XとVH-14Dを入れると、VAD706が出来上がり。

前提の話として、VAD506は「全部」に足りないのは「ハイハットスタンド」「キックペダル」「スローン」の3点。 この3点は個人の好みや体格に合わせて選択するものだから当たり前ではある。まぁ、実際にはお店でこれらもセットにしたものが売られてたりするけど。

一方、VAD706はさらに「スタンド」「バスドラム」がない。 あって当たり前な感じだけど、一応好きに選べるよ、ということらしい。 ただ現実的には選ぶ人はあまりいないと思う。 アコースティックドラムやっててスタンドにあまりがある、とかいう人はいるかもしれないけど、バスドラムはそもそもそんなに選択肢ないし。

で、VAD706はキックにKD-222を、スタンドにDTS-30Sを使うのが普通で、これで「VAD706一式」になる。 Rolandの公式の画像もそうだし、そもそもどちらも基本的にVAD706の専用品(DTS-30SはVADの専用品)だ。

VAD506のバスドラムはKD-200で、VAD706のKD-222とは違うけど、そもそもVAD706にはバスドラムが付属してないから「違う」というより「VAD706にはない」が正しくて、VAD706にKD-200を組み合わせることもできる。 VAD506の付属スタンドはDTS-30Sになっていて、あとはシンバルがVAD506はCY-14とCY-16R-Tの組み合わせなのに対して、VAD706はCY-16R-Tが2枚という違いはあるけど、これはほとんど気にならない違いに過ぎない。というか、私はCY-16R-TよりCY-14のほうが好きなくらい。 VH-14DはTD-50X用に登場したものだから、当然違う。VAD506はVH-10になってる。

だから、VAD506にTD-50XとVH-14Dを入れると、ほぼほぼVAD706になる。違いとしては、CY-14だけ。 あと、細かなところでは塗装が違う。VAD706のほうが凝った塗装で、全4色のカラバリがある(日本は2色だけ)。

このコンバートを実施するとTD-27とVH-10が当然ながら余る。もったいない。

私はVAD506は一緒に防音室も買ったし、買わないといけない3点に関してはほとんど「一番いいやつ」を選択したので、トータル200万円くらいした。 ここにTD-50XとVH-14Dだと追加で32万払うことになる。 VAD506は島村楽器で506,000円(値段がかかってる!!)なんだけど、そこからプラス32万円というとなんかVAD本体並で、すっごい無駄な出費っぽい。

と思いきや。

VAD706+KD-222+DTS-30Sは島村楽器で842,490円。 506,000円に32万円を足すと826,000円。

……あれっ、VAD506をアップグレードしてコンバートしたほうが安いの? TD-27とVH-10が余るのに?????

TD-27 + VH-14D も試した

TD-50Xより先にVH-14Dが来たので、TD-27との組み合わせも試してみた。

VH-14DをTD-27で使うには、ファームウェアアップデートが必要。 v1.11でVH-14Dに対応している。

なお、 v1.10でキット構成が変更されていて、サウンドも良くなっている(特にタムの響きが深くなっている)ので、VH-14Dに関係なくアップデートがおすすめ。

接続すると “Digital Pad Detected” と出てセットアップ画面に入るので簡単。 VH-10のように設定に自由度がないわけでも、VH-12のように面倒なセットアップがあるわけでもなく、やや迷走気味だったRolandのハイハットの解が出た感じがする。

VH-14Dをつけても当然ながら音が変わったりするわけではないんだけど、実際は音が結構変わる。 というのも、VH-10で「少しゆるいハイハットの音」みたいなのを出すのは至難の業で、あんまり音の段階はなかった、というか出せなかった。

それに対してVH-14Dを使うとかなりしっかり踏まないとガシャッて感じの音になるし、開いてないけど残響が残るくらいの状態もちゃんとあるので、「TD-27ってそんな音出せるんだ?」と思うくらいに表現が変わり、結果として同じ音は出なくなる(フルオープンのときは同じ音かもしれない)。

VH-10は「電子ドラムのハイハットとしては普通」くらいの感じだけど(e/Mergeよりは良いけど、aDrumsのほうが良い)、VH-14Dになると電子ドラムでは体験したことのない、生ドラムと区別が難しいような演奏感になるし、サウンドもちゃんとそれに応じたものになる。

踏みごたえはVH-10よりも軽いけどアコースティックよりはだいぶ重く、ボウの反発がだいぶ強くなったので今まで難しかった非常に高速なハイハットの連打がしやすくなった。 一方、エッジはまだ少し重く、しっかり止まる感じがある。

サイズが12インチから14インチに一回り大きくなるが、あまりそれを感じないのはなぜだろうか。 相対的には大きいけれど、アコースティックより小さいような気がしてしまう(アコースティックも14インチだから同じのはず)。色の問題かな。

結論、TD-27でもVH-14Dを入れると全くの別物になるため、全然アリ。 踏みに対するまるでアコースティックのような表現力はTD-27でも発揮されるから、VH-14DのためにTD-50X必須という感じはなかった。

新しい構成

  • ベースキット: VAD506
  • 音源モジュール: TD-50X
  • ハイハットシンバル: VH-14D
  • スプラッシュシンバル: CY-5
  • キックペダル: (YAMAHA) DFP9D
  • ハイハットスタンド: (DW) 9500TB
  • ドラムスローン: (Pearl) D-3500

最高グレード製品だけで固めたような、超豪華仕様が出来上がった。

これ、さらにカワイのナサールという防音室の中にあって、さらにその中にドラムの斜め前にはPCとモニターがあって曲を流したり映像を出したり配信したりもできる。 これも操作しやすいように工夫してある。

もはや、ドラマーの理想のかたまりといってもいいようなものが出来上がった。 プロでもここまで最高の環境を自宅に置いてる人はあまりおらんのとちゃうか。

なんの言い訳もできない最高の環境である。むしろ「へたっぴのくせに!!!!」とかヘイトを買いそう。 時々苦労してスタジオにいって生ドラム2時間叩いて、「久しぶりに2時間叩いてもなんの練習にもならん」とか思ってた頃からすれば、まるで夢のよう。

なお、お値段から想像できるかもしれないけど、VAD706って電子ドラムとして今考えられる最高のものであって、「私にとって」とかいうレベルではなく、「普通に考えたときに最上のもの」となり、「電子ドラムをはじめよう!金はあるからいいやつで!」ということをやるとVAD706をベースとして同じようなものになる可能性が高い。

ちなみに、ドラムや電子ドラムに詳しい人がもっともっとこだわって最高を追求した場合、drumtecのパッドを輸入するかもしれない。 一応、global shippingにJapanという選択肢はあり、

The minimum order value for Japan is 100€

You pay 65€ for shipping. Please also note the maximum weight!

If your order exceeds a weight or volume-weight of 5kg the shipping costs will have to be individually calculated (based on your address). You will receive an e-mail detailing the exact shipping fee.

と記載がある。もっとも、輸入したという人は見当たらない。 drumtecのパッドは本物のドラムさながらの見た目で演奏感も非常に良いそうで、以前であればV-Drumsでは満足できない人にとって憧れで、なんとか入手できないかと考える人は少なくなかった。 しかし現在はRolandからVADが出ているため、そこまでして入手する動機は乏しくなった。

また、キックペダルに関してはDFP9Dは7万円ほどして、55000円程度のTAMAのDyna-SyncやPearlのP-3002D、60000万円程度のDWの9002よりも高く、最高級といってもいい。あまり耳にすることもないGIBRALTARやNATALのペダルも5万円台だ。 しかし、存在もほとんど知られてないけど、DWには9000の上にMCD/MDDというペダルがあり、これは12万円もする。また、AXISとSONARにも10万円越えのペダルがあり、「もっと高級なやつは探せばある」だったりする。

けど、ここらへんの10万円を超えるペダルは特別な理由もなく選択すると多分後悔する。こういうのは、メタル系、特にブラストビートなどで超高速連打をするためのペダルで、超高速連打に特化してる。 普通は正確なリズムや豊かな表現といった演奏力も重要で、ただただ高速連打だけを求めるわけじゃない。なので、普通は選ばないものと思っていい。

だから「これ以上」というと、マニアでもないと知らないし、知ってても普通は買わない、みたいになる。 以前ならあえてキットで買わず、こだわりのアイテムでアッセンブルするという方法もあった。 けど、今はRolandのキットが(上位キットは)ベストな組み合わせだし、魅力的なサードパーティ製品もほとんどなくなってしまった。 また、TD-25やTD-30では多数のパッドを接続するためのエクステンダーがあり、これによってたくさんのパッドを使う構成もあったけれど、現在はTD-50でそうした製品がなく、TD-50にMix-inを使って拡張する方法があるため、「別製品を併用する」という話を別として、VAD706は最高の構成で、これに追加のハードウェアとしてキックペダル、ハイハットペダル、スローンに最高のものを選べばそれは最高のドラム環境だ。

VAD706のキットはTD-50X側の余り端子としてタム4とその他4で計5つのパッドを追加できる(TD-27の場合、拡張端子が3で、タム4がないため、ローフロアタムを追加するとあと2つ追加できる)。 CY-5がこの拡張端子を使う追加トリガーだ。CY-5は小さいシンバル型のパッドで、基本的にスプラッシュシンバル(パシッという音がする小さなシンバル)として使う。実際に私はスプラッシュシンバル、またはスタックシンバル(複数枚のシンバルを重ねて取り付けたもの。残響がほとんどない)に割り当てている。

シンバル構成に関しては、スプラッシュシンバル、スタックシンバル、チャイナシンバルで追加3枚欲しい、みたいな話があったりするのだけど、CY-5をスプラッシュシンバルまたはスタックシンバル、クラッシュ2(CY-16R-T)をクラッシュシンバルまたはチャイナシンバルに割り当てることで足りてる。 これはどういうことかというと、音色は変更可能で、かつRolandの場合一瞬で切り替えができるため、セットの数として必要なのは「1曲の中で叩く音の数」になる。スプラッシュシンバルとスタックシンバルの両方を使う曲であればトリガーは2つ必要なのだけど、曲ごとにどっちかであればトリガーはひとつで音色を切り替えればOKだ。

私の構成としてはシンバルはあと2枚くらい増やせるのだけど、私がライドを含めて4枚のシンバルで足りない曲を叩いてないので、シンバル追加の必要性はないのだ。 このあたりは、特にアコースティックドラマーの場合は「同じパッドなのに違う音がするのは嫌」という人は結構いて、こういう人は音色切り替えはあまりしないし、アサイン変更はほぼしないので、必要な音色の数だけパッドを設置したりする。TD-30を使う桿子Drumstickさんもそういうタイプの人だ。

一方、タムに関してはごく少数ながら私の叩く曲にも4タムを使う曲はあるし、設置したいところではあるのだけど、これは防音室にフロアタムをもうひとつ設置するスペースがないので、やっていない。 (厳密には入れられないこともないけど、とても大変)

実はスペースに関しては深刻に厳しい。 私の防音室はカワイのナサールの1.7畳だ。声優だとほぼアヴィテックス一択で、ナサールいいよ、と言っても話を聞いてすらもらえなかったりするのだけど、そもそもナサールのほうが仕様の選択肢が多く、1.7畳という選択肢もナサールにしかない。

VAD506を収める上で1.7畳のナサールは「ぎりっぎり」である。ポジションも相当制限されるし、「入ることは入る」みたいなレベルの話になる。 だが、2畳にしても正方形になるだけなので奥行きが増えてバスドラムの窮屈さがいくらか緩和される程度で、VADをちゃんと入れようとすると2.5畳は必要。

しかし、それだけで済まないのがこの問題の根深さで、VAD506はNE-100Bを2枚使っても乗らない。 私は2枚の中央を離した上で、右複合スタンドの足1本、ライドスタンドの足1本、フロアタムの足1本は外に出している。 なお、NE-1をダイソーで売っている60x30x15mmの工作材料と耐震マット(3mm厚)の上に乗せると、NE-100Bと完璧に同じ高さになるので、1本だけ足を出せるようになる。

いずれにせよどうやってもNE-100Bからはみ出す状態になってしまい、壁に当たるかどうか以上にシビアな調整を求められる要因になっている。

これを見て欲しい。最初に設置したときの写真だ。 このときは窮屈感こそあるもののきれいに配置されている。

そしてこちらが現在の様子。斜めになったバスドラム、全体的に右に寄ったキット、離されて斜めに配置されたNE-100B、はみ出すNE-10、絡み合うスタンドの足と違和感たっぷりで汚い。が、実際に演奏するとだいたい私のスタジオセッティングに近い状態にできている。本当はハイハットはもっとサイドに持ってきたいし、別にセンターをずらすセッティングにしたりはしてないのだが、これで叩きやすい。 セッティングが進めば進むほど狭い空間の中で望む位置に配置するために奇抜なことをして汚くなっていくのが悩みどころだ。

なお、キットを拡張することはデメリットもあって、「このキットでしか叩けなくなる」。 私は基本的に自宅練習でこのキットを叩くのと、スタジオでアコースティックドラムを叩くのがすべてなのだが、スタジオだと普通は2タム・3シンバルのキットなので、スプラッシュもスタックシンバルもローフロアタムもないのが普通で、特殊なセッティングや多点キットに慣れてしまうとスタジオや楽器店で叩くときに支障が出たりする。外で自前ドラムを叩くことはないので、練習目標は「そこにあるキットで良い演奏ができるような演奏力の獲得」にあり、この関係もあって多点化はあまり積極的ではない。 曲を気持ちよく叩くために必要であればアリだとは思っているけど。

TD-27とTD-50X

機能の比較

TD-27はハードウェア的にもソフトウェア的にも最先端であることもあり、機能的にはTD-50Xに対して劣るところがない。 もしかしたら厳密にいけばTD-50Xでは設定可能だけどTD-27ではできない、みたいな項目はあったりするかもしれないけど、機能的には同等、と考えていい。

ソフトウェア的な違いとしては、音色がTD-27が728なのに対してTD-50Xが900以上となり、大幅に増えている(TD-50はかなり少なかったので、TD-50Xになるまでは逆転していた)。 また、エフェクトもTD-27が30種類、TD-50Xが38種類となり、少し多い。

また、SMFによるレコーディング(いわゆるMIDIレコーディングで、MIDIコントローラーとして使うのではなく、単独で行うもの)はTD-50Xにのみある。

ハードウェア的には大きさが全然違うので違いは結構ある。 まず、TD-50Xのほうがフェーダーやボタンが多い、という点はエディットのしやすさという点でかなり大きな違いとなる。 TD-50はフェーダーやボタンが多いのにTD-27よりも操作しづらいUIだったが、TD-50XになってTD-27と同じようなものになり、大きく改善された。

これら音源モジュールはUSBオーディオインターフェースとして機能する。TD-27が28入力・4出力なのに対し、TD-50Xは32入力・32出力となる。

端子数は大きく違う部分で、まずダイレクトアウト端子はTD-27では2つ。この2系統に何を出すかは内蔵ミキサーで設定できる。 一方、TD-50Xは8つ。同様にルーティングが可能。 このダイレクトアウトはアコースティックドラムなら立てるマイクの数と同じようなものと思っていい。 小さなライブなら2系統あればバランス調整には十分だろう。しかし、レコーディングや、PAエンジニアがつくライブでは2系統では大雑把な調整しかできず、十分ではない。ここにTD-27とTD-50Xのポジションの違いがよく出ている。

トリガーはUSBは共に3で、TRSは総数だとTD-27は14、TD-50Xは16。 USBトリガーを3つ接続した場合、TD-27は9、TD-50Xは11。 前述の通りAUX端子がひとつ多いのと、TOM4があるためTD-50Xが2つ多い。

TD-50XはMix-in, Phone out共に2になっているのも違い。 Phone outでヘッドフォンを2つ接続できるのはどういう効果かよくわからないけど、誰かに聴かせたいときは便利そう。 Mix-inがふたつあるのは、音源入力と別モジュールの入力に使えるのが利点。

Master Outに関してもTD-27はTSが2つ(unbalanced)だけだけども、TD-50XはTS(unbalanced)に加え、XLR(balanced)がある。 スピーカーを2つ接続できるけど、そうではなくbalancedもあるよ、が正しいだろう。 BX3/BX4もバランス接続可能(TRSなので、XLRメス-TRSフォンなケーブルが必要)なので、こういうスピーカーを使う場合に活躍する。 なお、BX3/BX4のアンバランス接続はRCAなので、それはそれでTS-RCAケーブルが必要だったりする。

ただ、Hi-Zなんだろうか。BX3に入力したら音は鳴るけど、すごいこもってしまうのでちょっと実用的ではなかった。 これはTD-27でも同じ。

一方、TD-27にしかない機能としては、Bluetooth機能がある。 スマートフォンやポータブルプレイヤーから簡単に音源を流せるのがポイント。 TD-50Xにはないが、これはBluetooth機能がライト向け機能だから、というよりも、単純にTD-50と同じハードウェアなのでBluetoothが基板に乗ってないだけだろう。

なお消費電力がTD-50Xは30W、一方TD-27は9V, 770mAとあるため約7Wですごく違う。気になりはしないだろうけども。

サウンドの比較

サウンド面では、TD-27はドライで味気ないサウンド。ベースはTD-50なので生ドラムっぽいサウンドと表現力が備わっており、TD-50よりもナチュラルでライブ感のあるサウンドになっている。だが、エディットでキットの印象そのものを大きく変えるのは難しい。 一方、TD-50Xはもっとリッチなサウンドで、TD-30に近い。表現力はもちろん新しい世代のもので、エフェクトの効きも良いので音作りの幅はTD-27よりも広い。 TD-50Xは「そのまま使えるプリセットがたくさんある」というところに魅力が表現されていると思う。Rolandは「プリセットはたくさんあるが、そのほとんどは使えない」というのがお決まりだったが、TD-50Xは使えるプリセットが多く、それだけ「ハズレインスト」がなくなって使えるキット、イメージに近いキットを構築するのが容易になった。 「TD-27のシンプルでアコースティックっぽいサウンドが好き」という人は普通にいると思うので好みの問題ではあるだろうが、TD-50Xのほうが気持ちいい音を出す傾向ではあるだろう。

VH-14Dとの組み合わせはTD-50Xの音色のみ打点を反映した音色変化のあるハイハットサウンドを収録しているため、「VH-14Dの打点にわる音色変化」 はTD-27/TD-50では表現できない。

また、TD-50Xは音量に関して更新があったように思える。ハードウェアが変わってないので不思議だが、特にMix-inの音量が小さいという問題が解消され、今まではポータブルプレイヤーの出力では厳しいものがあったが、楽勝である。

新キットのレビュー

楽器としての演奏の話

基本的にはTD-50XとVH-14Dでアップグレードした形だから、まんま「VAD506/503にTD-50XとVH-14Dを入れようか悩んでいる」という人にとって参考になる話かな。 別の見方をすれば演奏感に関しては(バスドラにKD-200を選べば)VAD706そのものなので(見た目が少し違うだけ)、「VAD506/503とVAD706で悩んでる人」にも参考になると思う。

敷衍すれば、VAD506/503にTD-50X「または」VH-14Dを入れようかと考えている人や、TD-27とVAD506/503, VAD706で悩んでいる、さらにはTD-27のアップグレードを考えている人にも参考になるかもしれない。

まず、VH-14Dを入れることに関しては、前述のとおり演奏感はダンチだし、サウンドもめっちゃ変わるので普通におすすめできる。

TD-50X導入に関しては、正直非常に微妙な行為であることは認めないといけない。 機能が大きく拡張されるわけではないので、TD-27に満足しているならそこまで意味がない。 少なくとも、「VH-14Dを使うならTD-50Xにしなきゃ駄目」みたいなことはない。 TD-27でVH-14Dを使うと、TD-27自体が大きく変わったように感じるし、演奏感もサウンドも、ちゃんとVH-14Dの価値を見せてくれる。

それに、TD-27にはTD-50Xにはない、Bluetoothという機能があるし、必要な機能がコンパクトにまとまっているという点は魅力的だろう。

これを踏まえると、かなり高額なTD-50Xの導入というのはためらわれるし、ためらって当然のものだとも言える。 「必要性」の話をするならば特にTD-50Xにする必要はないし、TD-50Xにすることでできることが大きく変わるかというと、そもそもTD-27で要件を満たさないのでない限りは変わらない。

だから、TD-27で満足しているのならTD-50Xは必要ないし、TD-27もv1.10まで上げるとなかなかいいサウンド。

けど、当たり前の話として、TD-50Xは現行で最高のモジュールなわけだし、VAD706というのは現状考えうる最高の電子ドラムなわけで、たった2点の違いとはいえ、この違いが小さいわけがない。 音源も、TD-27とTD-50では価格が全然違うのだ。

機能性の面としては端子が増えるのは地味に便利。 そんなの一度も使わないということは普通にあると思うけど。 あと、ボタンの節度がいい。UI的にはTD-27のほうが迷わないと思うけど、ボタン数も多いし、フィーリングも良いのでエディットとか作り込みはこっちのほうが多少楽。

問題はサウンド。

やっぱ違うのよ。 表面的なサウンドはTD-17もそうだけど、大差ないんだけど、実際に叩くと表現力が全然違う。 TD-27でCY-18DRを叩くと、一応打点検知があることは理解できるんだけど、おおまかな位置しかないように感じるし、ボウを叩いたときはボウの音がする、って感じ。 でも、これがTD-50Xになるともう叩く場所で全然違う。おかげで、今まで結構安定してると思ってた自分のライドワークが全然甘いということに気付かされた。

ただ、単純にTD-50Xは難しい、という言い方にはならない。 TD-17もTD-27も簡単にスイートスポットの音が出るけど、そのせいでニュアンスが出しづらくて、ゴーストノートの入ったフィルをやってるときに「ゴーストノートにならん!!!」っと悩んだりする。 ニュアンス練習してるときは、よっぽどはっきりと叩き分けられる人でないと出せないから、練習迷子になっちゃう。っていうか、私がなってた。 あと、アコースティックドラム叩いたときに同じような結果にならないってのもあるよね。

TD-50Xだと、ほんとちょっとしたことで大きくニュアンス変わるから、キレイな音を出す難しさというのはあるけど、それだけ表現力の練習にはなるし、当然表現力豊かな演奏ができるわけで、それだけサウンドは良いよね。 Drumtecの動画とか見ると、TD-07からTD-50Xまでサウンドは大差ないような聴こえになってるけど、マジですごいと思う。

でも、単純に動画で聴くよりも、実際に演奏するとニュアンスの反映というのもあって、サウンドはすごく違うって感じるよ。

それに、TD-50Xはサウンド自体もよくて、サウンド数はTD-27だって負けないくらいあるけど、TD-50Xのほうがどのインストも使えるサウンドになっていて、実際の選択幅は広い。

いや、この言い方は正しくないかも。TD-27も別にインストが使えないわけじゃないんだけど、インストの差が小さくて、最終的なニュアンスはどれも割と似た感じになるんだよね。例えば、TD-27SC-Sには専用のキットがいくつか入ってるんだけど、寄せてるのは分かるんだけど、「やっぱTD-27の音だね」って感じる。そして、それはエディットによる変化幅のほうが大きくて、インスト自体の差はもっと小さい。 TD-50Xだとインストによってはっきり違うし、エディットの効果もTD-27よりも高いからサウンドメイクの幅がもっと広いなぁ、と感じる。 なお、キットの使いやすさ自体はTD-50XよりTD-27のほうが、そしてTD-27よりもTD-17のほうが高い傾向にあって、多分インストからしてサウンドを固めてあるからそうなるんじゃないかな。TD-50Xのキットは振れ幅が広い。

ここらへんの優秀さはTD-50から大きな進化だと思う。 正直、TD-50のサウンドってかなりドライで物足りない感じだし、キットも少なくてサウンドメイクの幅もだいぶ狭かった。あと、サウンドメイク自体結構やりづらかった。 TD-50Xのサウンドのそもそもの良さ、めっちゃ使えるいっぱいあるインスト、サウンドメイクのしやすさと効果っていうのはすごい驚きのポイントだと思う。

そもそもTD-50X導入を決めたのがこの「音がいいし、サウンドメイクの可能性がすごい」ってことだし、TD-27で自分の欲しいスネアサウンドに近づけることができなかったっていうのが理由だしね。ただ、実際に購入した上では、ニュアンスをすごく反映してくれるという点も同じくらい価値がある、と思った。 デジタルパッドってこんなすごいものだったんだなぁって。TD-27でもデジタルパッドの効果は大きいなって思ったけど、それよりもずっとすごいと感じさせてくれる。

なお、TD-27はv1.10でTD-50Xっぽいサウンドの方向性に変わる。

TD-50SC-Sもそれなりにがっつり試奏したんだけど、あれは構成としては普通にいいと思うんだけど、ちょっともったいなく感じる。

TD-50Xのサウンドや表現力に対してタムの打感が違和感あるんだよなぁ。普段VAD叩いてるからだと思うけど、VADほんと楽しいので、「サウンドはいいのに、打感は劣るなぁ」と感じるとなんかすごくもったいない気がしてしまう。

ちなみに、組んでみてわかったんだけど、TD-27KVとVAD506は打感は違うけど、サウンド的には基本的に一緒なのに対し、TD-50SC-SとVAD706(相当)だとサウンド自体結構変わる。

タムには打点検知入ってないので、サウンドが直接には変わってないはずだけど、やっぱ入り方は変わるからかな。 TD-50Xのほうがちょっとした違いも繊細に拾うし、その意味ではTD-27はかなり丸められるから、「電子ドラムはどう叩いても最高の音がする」に近いものがある。TD-17だと打点検知もなくなるのでもっとそう感じる。 難易度はTD-50Xのほうが高いし、演奏技量に関係なくって話だとTD-27のほうが良いサウンドがすると思う。

だから、この観点から行くと、TD-27はVADパッドやデジタルパッドの実力をフルに発揮できてないし、PDX-100はTD-50Xの実力をフルに発揮できていない。

TD-50SC-Sは打感がよくコスパに優れ、設置場所も省スペースなKD-180K-Lが付属するため、タムだけ買えばいい感じになりそうだ。 だが、問題はホルダー的におそらくTD-50SC-Sで使っているラックにVADのタムは載らないことだろう。

だから結局理想はVAD706なんだよね、という当たり前の話に戻ってしまう。 そりゃあそれが最高のキットなんだから、それが最高なのは当たり前じゃん、って言われそう。 ただ、VAD506はTD-27KVに対して確かに打感はよくなるけど、「TD-27なのにVADじゃないのはもったいない」とは思わなかったから、TD-27KVがTD-27の本命キットだとするならば、TD-50Xの本命キットはTD-50KV2ではなく、VAD706だと思う。 ただ、PD-108-BCとPD-128-BCはPDAシリーズと違って打点検知が入るので、「いや、TD-50KV2のほうがいいよ!!」っていう意見は普通に成立するので要注意!

配信・通話

TD-50Xを使ってドラム配信とか通話とかできないかな、ということを考えた。 私はLinux使いなので、まずはLinuxから考える。

TD-50XはUSB接続したときにMIDI楽器、またはオーディオインターフェイスとして扱うことができる。 これはUSBドライバーを「GENERIC」にしているとMIDIコントローラ、「VENDOR」にしているとオーディオインターフェイスになるという振る舞い。

ちなみに、USBデジタルパッド(VH-14Dとか)はそれ単独でもMIDIコントローラになるようになっている。

VENDORにしていると専用ドライバーがいるよ、ということなんだけど、LinuxでUSB接続すると普通にTD-50Xとして認識される。 普通にびっくりした。発売からそんなに日も経ってない(そもそも単品販売される第一便が納品されるより前に私は発注した)し、あんまり楽器とかLinuxではニーズないはずなのに。 ALSAすごい。

オーディオプロファイルはTD-50X Multichannel Duplexになる。 マルチチャンネル入力とマルチチャンネル出力というプロファイルもある。

どのように振る舞うかというと、TD-50Xのマスター出力がTD-50Xオーディオインターフェイスの入力となり、TD-50Xオーディオインターフェイスの出力から出した音はTD-50Xで鳴る。

そして、TD-50XでMASTER OUTと呼んでいるものは、実際にはMASTER OUTではなくて、例えていうと MASTER OUT BUS 1→MASTER OUT BUS 2→MASTER OUT みたいなことになっている。 で、TD-50Xオーディオインターフェイス入力はMASTER OUT BUS 1から出ていて、TD-50Xオーディオインターフェイス出力はMASTER OUT BUS 2に入る。 だから、PCからの音はマスター出力(ラインアウト)やフォンアウトには乗るけど、TD-50Xオーディオインターフェイス入力には乗らない。

基本的にこのあたりの振る舞いはTD-27, TD-17でも同じ。やったことないけど。

TD-50Xの場合、ルーティングが3種類ある。

  • 前述のとおりMASTER OUTでPCからの音が乗る前の段階の音がPCに入る
  • パッドの音がエフェクトなども介さずPCに入る (DIRECT OUT相当)
  • PCの音もループバックで全部入れる

だいたいのニーズは賄えそう。

さて、ここから配信することを考える。

PCから鳴る音をリスナーに聴かせないのであれば、標準のルーティングで良い。 この場合、音楽ソースはPCから鳴らしても配信には乗らないから、曲はMix-inから入れるか、もしくはSDカードに入れておいてSongとして鳴らすってことになる。 (TD-27とTD-17の場合はさらにBluetoothで鳴らすという方法もある。これはMix-inと同じ扱い。)

これは通話で相手の声は聴こえる状態にするとか、配信ならコメント読みを入れるとか。

PCからは曲しか鳴らさないのならループバックにしてPCから音を鳴らせばOK。

喋りもある場合は少し複雑。 演奏中は喋らないなら、Pulse Audio Control(pavucontrol)で切り替えればOK。

ドラムレッスンとかで両方入れたい場合は(打音とかも入っちゃうからどうなのかな、と思うけど)、 Pulse Audio loopbackで両方のソースをNull sink送りにして、通話アプリの入力をNull sink monitorにすればOK。 配信ならOBS Studioは複数の入力ソースを扱えるから何も問題なし。

だから、V-Drumsとラップトップあれば、マイク的にもカメラ的にも全部いけるってことだね。 まぁ、ラップトップのマイク・カメラで大丈夫ならだけど……

ハードウェアミキサーやオーディオインターフェイスを使う場合、V-DrumsモジュールのMASTER OUTからライン接続して、マイクもつないで、ってことになるけど、これ3ch以上入力があって(モノでいいなら2ch)、しかも場合によっては個別にファンタム電源設定できる必要があるって話になるので結構ハードル高い。

この場合のちょっとした技としては、TD-50XはMix-inが2系統あるので、オーディオインターフェイスにマイクをつないで、Direct Monitorをオンにして、フォン出力をTD-50XのMix-inに入れる、という方法で混ぜることができる。

TD-27とTD-17もBluetoothを合わせると2系統あるので、音源入力をBluetoothにすれば同じような方法が使える。

便利ぃ。

じゃあここからはWindowsの話。

Windowsの場合、配信はOBS使うから問題ないんだけど、通話のほうはWindows自体はそんな簡単にアプリの音声ソースを切り替えられるようになっていないので、アプリに切り替える機能が載ってないと厳しい。 例えばDiscordとかは切り替えられるよね。WhereByも切り換えられたと思うよ。

複数ソースはとてもむずかしいなぁ。 VoiceMeeter Bananaとか使えばできるんやろか。

まじでよく考えられてるなぁ、すごい使えるなぁ、って思うんだけど、別にこれTD-50X固有じゃなくて、TD-27でもできたし、なんならTD-17でもできることが大半なんだよね。できないのはオーディオのパラ出しくらい(TD-27はある程度できる)。

レコーディングの話

「SMFレコーディングはTD-50Xだけの機能」と言ったが、レコーディング機能に関しては根本的にかなりの違いがある。

注目すべきは、TD-50Xは他のモデルとはレコーディングの方式自体が大きく違い、TD-27, TD-17, TD-07のようにお手軽にいかないということだ。

TD-50Xの本体のレコーディング機能はSMFレコーディングである。これは前提の話だ。 エクスポート時はWAVを選択できるが、これは一度レコーディングしたMIDIデータを元に再度演奏してエクスポートするというものである。 また、他機種であれば他のオーディオソース(クリック音やMix-inなど)を含めるか、もしくはドラムだけのどちらかで(TD-27に関してはさらにソングも含めて3系統の選択で)オーディオ録音するが、SMFに書いてエクスポートするという仕様上、TD-50Xはオーディオのレコーディングができない。SDカードに入っている「ソング」だけは可能だが、これは「書き出すときに再度ソングも鳴らす」という仕様。 ダイレクトオーディオレコーディングができない。

そのような要求においてはUSB接続してDAWで録音しなさい、ということらしい。 練習や、サッと録るようなことに使うものではない、ということか。でもTD-50Xだけは「一時記録のオーディオ」が作れるようになっているので、むしろ練習では使いやすそうなのに。

しゃあないので、こんなシェルスクリプトを書いた。

#!/bin/zsh

typeset time_prefix=$(date +%Y%m%d_%H%M)
typeset musicfile="$1"
shift

while true
do
  ffmpeg -y -f alsa -i pulse -vn -c:a libopus -b:a 256k ~/Recording/"${time_prefix}-${${musicfile:t}:r}.opus" >/dev/null 2>/dev/null &
  typeset -i ffmpeg_pid=$!
  mpv --player-operation-mode=pseudo-gui -- "$musicfile"
  kill -QUIT $ffmpeg_pid
  read -q '?Retry? [y/N] ' || break
done

if read -q '?Discard this session? [y/N] '
then
  rm ~/Recording/"${time_prefix}-${${musicfile:t}:r}.opus"
fi

これで裏でFFmpegによる録音が走って、同時にmpvでの楽曲の再生が始まる。 この再生音の収録は、USBで出力してループバックするか、もしくはMix-inでTD-50XにつなぐかすればTD-50X Sourceから録音できる。 mpvが終了すると録音を停止する。 すると再度録り直すかの確認→この録音を捨てるかどうかの確認という流れ。録り直す場合はまたFFmpegとmpvが立ち上がる。 録音を残す場合はEnter, Enterという操作だから簡単。

これを右クリックからできるように、Nemo Actionも書いちゃう。

[Nemo Action]

Name=Recording with your TD-50X
Comment=V-Drums Recording Helper
Exec=<vdrums-recording.zsh %F>
EscapeSpaces=true
Selection=s
Extensions=any;
Terminal=true

唐突に難しい話(プログラミングの話)になったけど、こういうひと工夫をしないと「DAWでレコーディングする」みたいな話にならざるをえず、かなり面倒になる。 こういうことをせずにお手軽に済ませるにはレコーダーへのLine-inとかあるかもしれないが、V-Drumsで完結できなくなっただけでもだいぶ面倒に感じる。

私はLinux/CinnamonなのでZshスクリプトとNemo Actionsを書いたが、本質的にはFFmpegとmpvがあればできることなので、Windowsでも普通に書けるだろう。

だが、話はこれで終わらない。

まず、Linux上ではTD-50Xはマルチチャンネルデバイスとして認識されるが、それはあくまで「そうであることは知っている」というだけで、ドライバはMaster sinkとMaster sourceしか扱わない。つまり、TD-50Xを実際にマルチチャンネルデバイスとして扱う方法はない。 また、Windowsにおいてもマルチチャンネルありきの話をするとDAWで録音するしかなくなってしまうため、毎日の演奏を記録していくみたいなことには適さない。あくまで、「リリース音源」を目指した演奏の録音になるのだ。

で、Master sinkとMaster sourceのみを使う話をすると、ルーティングをloopbackにするとMaster sinkの音がMaster sourceから入ってくるので楽曲と演奏の両方をオーディオレコーディングすることができる。 だが、これをするとMaster sinkで鳴らした楽曲の音が-6dBされるようだ。

楽曲が大幅に小さくなり、ドラム演奏が目立つのでこれはこれで悪くないが、どうもこのバランスを調整する方法はなさそうなのでちょっと使いづらい。また、loopbackはローを薄めるEQがかかっている気がする。

手っ取り早い回避方法としては、音源はMaster sinkから鳴らすのではなく、Lineで出してTD-50XのMin-inで入れるという方法がある。この方法だとヘッドフォンで聴くのと同じ音になるように思える。

loopbackで録るバランスをなんとか調整できないもんかと試行錯誤しつつ、どうにもならないので今Rolandに再度問い合わせてる状態だけど(本体でのレコーディングの件もRolandに確認した)、多分素直にMix-inから入れるのがいい。

はっきり言って、単に曲に合わせて叩いて鳴ってる音を録るって話だとTD-17やTD-27のほうがずっと簡単。本体でできるし。

もし、Mix-inから入れても駄目でも、TD-50XはPhone OUTが2つあるので、ここからLine出ししてPCにLine-inでつなげば解決する。私が防音室で使っているHP ProDesk 600 G2 DMはHeadset端子とHeadset/Line-in端子がある構成なので2本つなぎでちょうどいい。 ちょっと線の取り回しが汚いけど。 Headset端子しかないラップトップでやる場合は、Master Sinkで鳴らして、Phone Out→Line inが正解だと思う。

でも出力より入力のほうがPC内蔵サウンドカードは厳しいので、問題ないならMix-inで入れてMaster Sourceを録るほうが音はいいかな。

最終買ってどうだった

★★★★★!!!!

もちろん、VAD506環境入れた時点で、今までせいぜい月イチくらいでしか練習してなかったドラムが、なんなら毎日叩けるようになったわけで、世界が変わったと言っていいんだけど、TD-50XとVH-14Dの組み合わせもかなり変わるわ。

ドラム叩いてるときの気持ちよさと楽しさが1.5倍くらいにはなった。

あと、なんだろう。ニュアンスがキレイに反映されるようになったからか、サウンド的に理解しやすくなったからか、それとも単に「TD-50Xを使ってる」という心理的な問題なのか、従来よりもすごいキレイに叩けるようになった。 今まで外しまくってたフレーズもさらっといけたし。逆に今までできてなかったことに気が付かされたフレーズもあるけど。

あと、個人的な感情なんだけどさ。

私がドラム始めたのって、中学3年生のときで、1998年なのよ。 フラッグシップでいうとTD-10の時代、V-Drumsが出て間もない頃。

で、他のところでも言ったけど、私は当時町田のイシバシ楽器に通って試打で練習してた。 試打の制限が特になかったのもあるし、他にドラム扱ってる店がなかったのもある。 JR町田駅を出て右手、東急ハンズ(これも今と場所がけ違う)の中だったか、途中だったかにあったはず。

確か4機種あって、YAMAHAとRolandが2つずつあった。 YAMAHAは2機種とも調子が悪くて、1台はそもそも音が出なかったし、もう1台は確かハイハットのペダルが効かなかったんだったかな。とにかく、YAMAHAは2台とも演奏できる感じじゃなかった。 実はこのときに限らず、1度も完調なDTXに遭遇したことがなくて、私の中で「DTXは壊れやすい」ってイメージがついちゃった。

だから私はRolandの電子ドラムを叩いていた。 フルメッシュではなかったはずだよ。TD-5とかかなぁ。

でも、その後はあんまり。自分で電子ドラム持つなんて考えもしなかったし、たまーにスタジオで叩くくらい。 ドラムマニアしてるほうがずっと多かった。

「自分の電子ドラムが欲しいな」って思い始めたのは2010年とかそれくらいだったかな。 やっぱドラムが好きだなぁって思って。 で、ついに2014年にTD-4KPを買うわけだ。

歴は長いけど、私はとにかくドラムが下手だったから、たたければそれでOKくらいの勢いだった。 「枕でも叩いてたらええんちゃう?」ってすごく悩んだくらい。 ただ、キックとか、ハイハットペダルとか、トレーニングパッドじゃできない部分が下手というより「できない」という有様で、「ドラム叩けるようになりたい」って気持ちでやっぱ手元になきゃ!! ってなったんだよね。 結局、忙しかったこと、広げるのが結構手間だったこと、とか色々な理由であんまり叩かなかったけどさ(今もTD-4KPは手元にある。)

TD-4KPは結構問題があった。叩いてるとパッドがずれやすいとか、ポジションが結構変だとか、共振で違うパッドが鳴りやすいとか。 なにより叩いてるフィーリングがアコースティックドラムと全然違うから、TD-4KPで練習しててもアコースティックドラムが叩けるようにならなかったんだよね。

実際には場所の問題もあってもっといい電子ドラムを買うのは現実的ではなかったんだけど、とはいえTD-4KPに不満があるわけだからいい電子ドラムが欲しいなってなるじゃん。

で、そのときだと一番いいやつって言ったらTD-30だよ。ほかは、TD-15とTD-11。

TD-30は、アコースティックドラムみたいな迫力ある見た目で、そもそもサイズが全然違った。 これは、VADみたいなことではないんだけど、TD-15やTD-11のパッドは小さいやつだったし、値段も全然違ったので、あからさまに「TD-30は特別」だったんだよね。

店によってはTD-30だけは試奏できない、あるいは試奏するときに申し出なきゃ駄目ってこともあったし、こんなすごい高くて生ドラムみたいな見た目したキットは、プロが練習用に叩くようなやつなんだろうな、って思ってた。 実際、楽器屋に立ち寄った人でも、TD-30には近づかないようにしてた人が多かったね。ファミリーとかで、値段的にやばいと思うんだろうけど。

でも、やっぱ憧れではあるし、TD-30の動画とか結構繰り返し見たよ。

TD-25が出たときは、それまでTD-30だけ全然違う特別な感じだったのに対して、TD-25もそれっぽい感じになったから、TD-30の特別感は薄れた。 だけど、TD-25はすごく打点検知を強調して売ってたから、バスドラもろくに踏めない私には無縁のものだなぁって思ってた。 でも、その下のTD-11はとにかくしょぼかったから、もしも買うとしたらTD-25かなって思ってたね。 TD-11はハイハットペダルが単なるセンサーなやつだったから、ハイハットペダルが踏めない問題は解決しなさそうだったし。

で、TD-50が2016年に出るんだけど、これはもう出る前から注目していて、動画も何度も見たし、楽器屋に入荷したときは即見に行ったよね。 だからTD-30やTD-50には深い憧れがあって、いっそ神格化してるレベルだった。 初めてTD-50に触ったのは、今お世話になってるお店が初めてで、aDrumsもそうだけど、かなり恐る恐るだったのを覚えてる。 最終的TD-50SC-SじゃなくVAD506にしたのは、やっぱりTD-50は私には畏れ多いって思ったのも一因だった。

でも、毎日VAD叩いていればさすがにいくらか上手くもなるし、シンプルにドラムが楽しめるようにもなった。 もちろん、今までできなかったハイハットのオープン・クローズだってできるようになったし、ブレブレだったリズムも一応曲に合うようにはなってきた。曲なしだと今もブレブレだけど…

で、TD-50XとVH-14Dが出て、VH-14Dに関しては「そりゃ入れるでしょ!!!」って感じだったけど、「VH-14Dを引き出すにはTD-50Xがあるべきなのかなぁ」って考えたことが今回のスタートで、TD-27でも使えるわけだから、「TD-50Xが理想のスネアサウンドに近づけられる感じだったら買っちゃおうかな!!」ってなった。

けどね、私にとってTD-50Xを導入するってのは、自宅に防音室を入れるのと同じくらい大逸れたことだった。 ようやくドラムをちゃんと操作できるようになったくらいのへっぽこドラマーですよ。それがTD-50Xとか、質素な設備でがんばってる世のドラマーと、Rolandに申し訳ないような気がしちゃうよね。

でも、TD-50XをVADに組み込んで、実質VAD706になったドラムセット、震えるくらい良いの。 私でも違いははっきりわかる。2Dと3Dの違いとか、VRとリアルの違いとか、そんな感じ。今までパチッとした音が鳴る「デバイス」だったのが、「生」になった。ひとつひとつの音に感情が乗るようなもので、ドラムという機械の一部になったような気持ちで叩いていた今までと違って、音楽することに自然と入り込んでしまう感じ。ライブステージに立っているようなもので、楽しさが「立体的になった」。

だから、私はTD-50Xに選んでもらえるようなドラマーになりたいと思う。 君に必要なのは、君に合ってるのはTD-50Xだよってね。

TD-27とTD-50Xで悩んでる人にアドバイス

TD-50比だと「TD-27でええんちゃう?」って感じの逆転現象があり、さすがにそろそろフラッグシップモデルの更新が必要という状態だったが、ハードウェアはそのままにソフトウェア的な改良でちゃんとフラッグシップモデルとしての立ち位置を取り戻したのはすごいと思う。

前提として、TD-50Xだけが持っいてる機能、8バスダイレクトアウトや14トリガーを使う場合は選択の余地がなくTD-50Xになる。

そうでなく、悩む余地があるのなら、「特別な理由がなければ」TD-27で良い。

TD-27KV-Sはだいたい30万くらい、TD-50K2はMDS-GRD2とKD-140BCを組み合わせると58万円程度。 差額が28万あるが、VH-14Dの価格が77000円なので、VH-14Dを組み合わせてもまだTD-27K-Sのほうが安い。 TD-50K2の価格だとVAD506も選択可能なので、モジュールとしてTD-50Xが欲しいというのでなければTD-27のほうが良さそうだ。

機能的にTD-27がTD-50Xに劣る、ということは特にないため、ほとんど音質面で選ぶか、あとは操作系で選ぶかでないとTD-50Xが候補にならない。

操作系はあまり馬鹿にならず、モジュールをたくさんいじる人はそれを理由にTD-50Xを選んでもいいと思う。 いじりはするけど、1回仕上がったらもう触らない感じであればTD-27もそんなに不満はない。

音質面はTD-27はかなりドライだ、という点が大きい。 TD-27のサウンドは私は当初から物足りないと思っていて、派手さが欠ける。 aDrums, EXS, e/Mergeといったライバルが割と派手な音になっている点も含めてちょっと寂しいかもしれない。 ここはリバーブを調整したりしても、ベストな仕上がりにはなかなかならない。 TD-50Xは簡単に派手でカッチョイイ音が作れるから、そこにこだわるならTD-50Xのほうが良いかな、と思う。

TD-27KV-SとVAD506の違いに関しては、「小さいけれど明確な違いがある」という感じ。 演奏感はVADのほうが明らかに良く、「最高の演奏感が欲しい」と思っているならVADになる。 VAD506とTD-50K2で悩むなら、サウンド重視か演奏感重視かで変わる。VAD506にVH-14Dを使う場合、だいたい同じ値段になる。

簡単にまとめると、こう

製品 演奏感 サウンド 価格
TD-27KV-S かなり良い 良い 30万くらい
TD-27KV-S + VH-14D とても良い 良い 38万くらい
TD-50K2 とても良い とても良い 58万くらい
VAD506 とても良い 良い 50万くらい
VAD506 + VH-14D 最高 良い 58万くらい
VAD706 最高 とても良い 84万くらい

TD-27K-S, TD-50K2ともにバランスはとても良く、VADにすると演奏感がより良くなる。 TD-27K-SからTD-50K2だとVH-14Dによる演奏感の大きな向上が果たせるのと、サウンド面もぐっと良くなる。

「価格的にTD-50K2はかなり無理する感じ」であれば、特別な動機がなければTD-27KV-Sか、あるいはVH-14Dを加えるくらいを有力と考えてよいと思う。

単純にVAD506かTD-50K2のどちらか、ということだとVADのパッドの効果よりもVH-14Dの効果のほうが大きいため、TD-50K2を推す。 ただ、ここで問題はVAD506にVH-14Dを組み合わせてもTD-50K2と同等の価格に収まる、ということで、この場合は結構悩ましい。

VAD506をベースにVAD706相当のアップグレードをするとTD-50XとVH-14Dが必要で、これが32万円ほどとなる。 一方、TD-50K2ベースでVAD化すると、506部品の場合はPDA100-MS(約5万円), PDA120-MS(約5.3万円), PDA140F-MS(約5.7万円)が必要で16万円となる。TD-50K2は付属バスドラムがなく、自由に選ぶ形式なので、最初からVAD化を見据えてKD-200-MSやKD-222を選択するもよし。 さらにここらへんのパッドは普通の3極TRSパッドなので、aDrumsのパッドを選ぶこともできるし、張り切ってdrumtecのパッドにすることもできる。 また、KD-A22を使ってアコースティックドラムをコンバートするという方法もとれるし、アコースティックシェルにメッシュヘッドをつけてRT-30Kを使うという手もある。

つまり、将来的にVAD706に近い構成へのアップグレードを考えるのであれば、TD-50K2にしといたほうが良い。 なお、この場合スタンド/ラックは大きいものを使う(GRANDかSTAGE)か、DTS-30Sを使うかしないと後で困ることになる。

もっと先のことを考えるならば、VAD506のハードウェアはもうここから置き換えるのが難しいレベルにあり、アコースティックに近いサイズであるためこれ以上のサイズアップの余地はあまりなく、打感を構成する要素はあまり変化していないため、新たにUSBパッドが増えない限りVADパッドからの更新はそうそうできない。 TD-50Xが理想的なモジュールであると思っていないのであれば、VAD506で5年ほど演奏し、次のフラッグシップモジュールが出たらそのモジュールと組み合わせる(もし新しいデジタルパッドが出たりしたら、そのパッドとの交換を含む)という計画もアリ。

楽しいよー

狭い防音室に無理やり収めているとか、平日日中は拘束時間だからあまり叩ける時間がないとか、究極完璧でない要素はいくつかあるけど、ドラムを叩くのは根本的に楽しい。

いや、ドラムってほんと楽しい。 私はもともとオルガニストだけど、オルガン時代からドラムが好きで、中3からドラムを始めて、私にとっては唯一「楽しく」演奏できる楽器だった。 プリミティブで、「覚える」ことより「感じる」ことで演奏できて、表現つけるのも、思い通りにするのは難しいけどトライするのは簡単。

難点は非常に大きな音と振動が出る上に場所をとるので、そう簡単に自宅では演奏できないことかな。 実際、私はこの環境、導入前は考えるだけで気が遠くなりそうなレベルだった。

それでも、スタジオでちょっと叩くだけでも本当に楽しいんだ。 感覚がおかしくなるから最近は全然やってない(現行機種だと1回だけ)けど、ゲーセンにドラムマニアだってあるしね。 電子ドラム導入って話だとハードルが高くて簡単には勧められないけど、一回スタジオで叩いてみればいいと思う。 一軒家の人なら、いきなり勢いでTD-17KVXとか、TD-27KV-Sとか買ってもちゃんと楽しめるんじゃないかな。 音楽聴いてるとついついテーブルこんこんしたり、足がパタパタしちゃう人は絶対始めるべきだね。

ほとんど理想そのものを具現化したような環境だし、ただただ叩いてるのが楽しい。 もっと上手くなったらな、と思ってるけど、それだってこうして練習を積み重ねてることで少しずつだけど近づいてるはず。

V-Drums(ドラム)を始める人へのアドバイス

音の問題は深刻

まず、ラバーパッドを叩くとすごい音がする。弱く叩く分にはいいけど、強く叩くとヤバイ。

そして、それ以上に問題なのが振動。叩けばその振動が足を伝って床に響く。そうすると床が鳴ってしまうので、階下の人に影響が出る。 特にバスドラムはかなり強い力で叩くことになり、振動も大きい。

振動を抑制する装置は色々あるんだけど(NE-1, NE-10, NE-100B)、一軒家で1階にいる人に耐えられないような騒音を与えなくて済む、というようなアイテムであって、マンションで階下の人から苦情が来なくなるアイテムではない。

一軒家なら単にメッシュな電子ドラムなら日中は大丈夫だと思う。 生ドラムは防音環境でないと無理。そもそもかなりうるさい吹奏楽器でも適合する防音室はDR-30という-30dBのものだけど、ドラムだとDR-50を必要とする。そして、DR-50を使ってもまだうるさい(電子ドラムならDR-30で全然大丈夫)。

マンションで電子ドラムは常に騒音問題と隣合わせなんだよなぁ。どんなマンションかにもよる。防音がしっかりしているマンションであれば、NE-100B, NE-10, NE-1をフルセットしてあげればいけるかもしれない。 私はそれでも苦情がきたので(床に関してはもっと色々対策してた)、防音ブース入れたけど。 安普請ではないけど、外の声が全く聞こえないみたいことはないという家だとそんな感じ。

まず家でやれるかを最初によく検討することが必要。 特に子供はめっちゃ力入ってたりするから。

モデルは

最低でもTD-17KVX-Sがいいよ、というのが基本的なアドバイス。 それ以下は叩いてみればすぐ何かしらの不満が出る。基本的な遊び方、というか、V-Drumsでできる基本的なことはTD-17なら一通りできるし、パッド構成としてもちゃんとした練習になるものがついてる。

モジュールで遊ぶ、という点を重視しないならTD-07KVXもアリ。 音をいじる余地は少ないけど、結構いい音するので、そこまでこだわりない人なら全然アリだね、って思うんじゃないかな。 TD-07KVXのお値段はサウンドハウスで15.5万円。 ただ、V-Drumsとして必要なものがすべて揃ってるTD-17KVX-Sが18.6万円なので、私は少し微妙に感じてしまう。

EXS-5も良いと思うけど、だいたいTD-17KVX-Sのライバルでありながら、19.8万円とさらに高いのがちょっと。

動画は公式よりDrumtecのもののほうが参考になる。 TD-07KVXの動画はこちら。一方のTD-17KVX-Sはこちら

V-Drumsは「レスポンスが腐ってる」みたいなことは基本的にない(いや、TD-1は叩いてないところの音が入ることがあるので、TD-1は除く、ではある)ので音とパッドの話になるんだけど、バスドラムとハイハットペダルがただのスイッチであるタイプ(パッドの物理的接触がないタイプ)は静かではあるんだけど、感触はすごく変なので、練習としては成り立たないかなぁ、と思う。むしろうまい人はうまく調整して叩けるみたい。 あと、スネアはドラムの中心になるものだし、打感とサイズは大事。KVXはこの必要なポイントが揃っているので、ドラムとして必要なものを網羅している感じ。

もういっこ上のTD-27KVになると、スネアとライドがデジタルパッドになって、打点とか、細かなニュアンスとかもリアルに再現してくれるようになる。 表情づけとかも含めたレベルの高い練習やプレイを求めるならこのレベルが必要になってくる。基本的には叩ける人向けだけど、これから始める人も志が高いならアリかもしれない。お値段はサウンドハウスで28.6万円。 サウンド的にはTD-07やTD-17のわかりやすい電子ドラム的味付けのされたサウンドからアコースティックドラムに近いサウンドに変わってる。 パッドは打感はそんなに変わらないんだけど、リムの高さが違うのか、叩きやすさはTD-17KVX-Sよりもずっと上。 私が買ったVAD506はTD-27にアコースティックドラムさながらのパッドを組み合わせたもの。見た目だけじゃなく、打感や反応もよくなっていて、すごく気持ちよく叩ける。お値段、50.6万円。完全に趣味の領域だね。

TD-50K2は最高のモジュールと、その力を引き出すのに最低限必要なパッドを組み合わせたもの。デジタルハイハットVH-14Dが加わったのが非常に大きい。お値段もだし、機能もだし、叩けない人がおいそれと買えないというか、プロ用の空気出しすぎてて、売り場にあっても近づけないオーラがある。サウンドハウスにはまだないけど、VAD506よりは高い。それにバスドラム別売りなのでさらに高い。 VAD706は今存在する電子ドラムの頂点に君臨する逸品。サウンドハウスで72.8万円。えらい安いし、その上KD-222が付属になってるけど、本当か?って感じ。KD-222別売りなら、まぁわかる。なにもかも素晴らしい。完璧。理想。惜しむらくは、グロス・チェリーの色が日本には入らないことかな。めっちゃかっこいい色なんだけど。

今あなたがドラマーではなくて、ドラムを最高の趣味にしようとも思っていないのなら、TD-07KVX, TD-17KVX-S, TD-27KVが候補だと思う。 他メーカーならどうか、というと、あくまで私の個人的な意見だけど、EXS-5は考える余地はある。パッドが全体的にばいんばいんなのがいまひとつだけど。aDrumsは良いんだけど、クローズドリムショットが木枠を叩かないといけないのは、かなり大きな音がするのでちょっといまいちかな。あと、Rolandのデジタルパッドが非常に素晴らしいので、aDrumsは周回遅れな感じがある。 e/Mergeはすごい残念だったな…すごく期待してたんだけど、ハイハットが「えーっ」て感じだった。あと、レスポンスが悪いのが致命的。 ヤマハは……うーん、どう評価したらいいのかな。少なくとも私がドラムにもとめている要素は何一つカバーしてない。 ヤマハがドラムをわかってないはずがないんだけどね。アコースティックドラムも作ってるし、ドラムギアでも結構有名なメーカーでもあるし。実際私はヤマハのキックペダル使ってるわけだし。

モチベは

叩いて楽しい。

私はそれだけかな。バンド組んでるわけでもなく、ライブするわけでもなく、叩いてみた動画出せるほど上手いわけでもないので。

人によっては、バンド組めば仲間との時間っていうのは特別な体験になるし、新しい接点にもなると思う。 楽しいことばかりじゃないと思うけどね。私もバンドしてた時期もあるけど(パートはドラムではなかった)、やっぱ色々大変だったし。 でも、世界は広がるよね。それに、ドラムはバンド楽器の中で人口少ないので、割と組みやすいって事情もあったりする。 ソロで成立しづらい楽器なので、ひとりで黙々ドラムやってる人は少なめだし。

よっぽどうまくならないと難しいし、クリアしなきゃいけない問題も多いけど、叩いてみた動画とか出すのも楽しいと思う。 それで見てもらえたり、リアクションもらえれば大きなモチベになるよね。

ドラム叩くこと自体にモチベを見いだせないなら、DTX Maniaのためのゲームコントローラーと見ることもできるよ。 確か本家ドラムマニアのほうも今はPCでできるようになっているはず。

でもね、ただ曲に合わせてリズムを刻む、それがとても楽しいのよ。 私はすごくいい趣味だと思ってる。 他の楽器と違って、別に上手くなくても「なんとなく曲に合わせて叩く」くらいはできるのもいいよね。

おまけ TD-27 向けスペシャルキットを配布

私が作ったスペシャルキット4点を配布しちゃうぞ!

このHALシリーズはTD-27向け。 TD-27で作ったSDカードの\Roland\TD-27\Kitフォルダにマージすれば使える。名前がかぶってしまう場合はリネームしてね。

収録キットは次のとおり。

HAL🔥Verb

ダークなスネアサウンドのメタル系。

RichaadEBのLyin’ 2 Meを聴きながら寄せたもの。 ライドはジャズっぽいチキチキが入ることを想定してる。

HAL Latin

ラテンパーカスの入った曲を叩くためにキットを組んだもの。 私が演奏する曲で必要だったので組んだだけで、特にエディットはしてない。

HAL Light

明るいポップな曲に合わせるようにして作ったもの。スネアは軽いけどバスドラはバスッとした感じで案外重め。AUX1はスタックシンバル。

スネアは強く叩くとタンバリンが入る仕様。

HAL🔥Fire

コンセプトはHAL🔥Verbに近いけれど、スネアはもっとばぁぁんって感じ。HAL🔥Verbよりも明るめのサウンドなので、派手できらびやかなロックに合う。一番よく使っていたキット。Studio Aよりも重いサウンド。

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