女性に限らず「企業利益と適合性」について

#Society

お題

今回のお題はこちら。

日本の企業で使われるオフィスチェアのほとんどは未だに男性の身体に合わせて設計されている

という広告について。

この広告は宇宙服についての記述が事実でないことを指摘され燃えているけど、そっちではなく、この記述について、またこの記述に対するリアクションに対して。

ちなみに、この記事はあんまり楽しくないので、5月から塩漬けになっていて、結局2番目に出してしまったけど、かなり長い記事を他にいくつも書いたあとで続きを書いた。

リニューアルしたのに記事がないのは寂しいしね。

それは性に関する問題なのか

知らない人もいるかもしれないけれど、私は男性で、身長自体は標準的。平均よりはちょっと低い。

けど、股下はとても短い、要は短足で、股下69cmほどしかない。 これは自転車採寸の方式なので、パンツラインを基準にする流儀(なんのための股下計測なのかは全くわからない)では違った値になるけど、いずれにせよ身長150cmの女性よりも脚は短い、というのは事実。

一方、体格は一般的な男性と比べても良いほう。 体重とはあまり関係なく、そもそも骨格が非常に大きいので、スーツとかジャケットは基本的にオーダーしないとぴったりにはならない。特にちゃんと体型維持してた頃は、胸囲は90cm越えるけどウエストは55cmとかだったので、どうやっても合わなかったんだ。

だから、私は「特殊体型」ってことになる。

さて、私が使っているWINCaseは座面高が435-525mm。 エクサージュは430-520mm。

割と標準的な高さだけど、430mmで脚がつかない、っていうのは、女性ではないんじゃないかなぁ。 女性のほうが一般に脚長いし。私でも430mmだよ余裕よ。

低さで知られているバウヒュッテ・RS-950は380-455mm。コンティークスは410-470mm。 いやでも、430mmでも裸足で余裕なんだけど、オフィスだとだいたい靴履いてるだろうし、女性ならハイトの高い靴の選択もできるだろうし、脚がつかないっていうと結構特殊な体型じゃないかなぁ。私より足短いってことだもん。

ちなみに、パイプ椅子は400mmが主流。コクヨは355mmとかなり低い。 だから、「椅子が高すぎる」という主張は主に「パイプ椅子ですらギリちゃんと脚がつく」というレベルになり、子供でもパイプ椅子が大きいと感じる人は結構小さい子供に限られるから、やっぱり特殊体型じゃないとありえないように思う。

「でかい」印象が強いアーロンチェアは3サイズあって、380-480/405-520/425-580の3つ。 アーロンチェアは前端が上がり気味で、かつ座面が長いので、座面高の割には高く感じる。 アーロンチェアは対応表に142cm/41kgから記載されてる。

一方、座面サイズでいうと、さすがにWINCaseはでっかいチェアなので余裕だけど、エクサージュは小さい。 比較的大きめのチェアとされるバロンでも小さい。窮屈だなって感じることはあるけど、それは私の体格が良すぎるからなので、「まぁ、仕方ないよね」って思うし、だから体格にあったチェアを選ぶだけ。 WINCaseはサイズ自体は大きいけど、身体にフィットする骨格があるので、小柄な人でもフィットしやすい。骨格自体動かせるし。だからサイズが余っていても全然気にならない。

良い目のチェアは全体的に小柄な人・ヤセ型の人を基準作られていることが多くて、体格の良い人はラージモデルを選ぶ、みたいなことが多い。DXRacerとかもそう。 DXRacerだと標準モデルとされるFomulaが一番小さくて、かなりタイト。私だと収まらない(!)。その上にDriftとValkyrieがあるけど、Driftはサイズはともかくフィットがルーズめなのでさらにゆるい。Valkyrieは合うけど、Driftはちょっとゆるいかなって感じる。そして、さらにその上にKingがある。大きすぎる。 コンティークスも、私は標準モデルはちょっとタイトに感じる。でもかといってローザは大きいし、ティトリスに至ってはアームレストに手が届かない。

ゲーミングチェアは特に女性ユーザーも多いので、基本サイズが小さめということが多く、サイズが合わない傾向がある。 それと比べたらたしかにオフィスチェアは若干緩めかもしれない。

でも、私の会社だとチェアは6種類くらいあるけど、1種類以外は私はちゃんと座れないようなサイズだから、女性でも大きすぎるってことはないと思うなぁ。 仮に大きかったとしても、座れない(入らない)とかではないわけだし、「女性のことを考えてない!」よりは、「大柄な男性のことを考えてない!」のほうが妥当な話になる。

問題は自己利益しか考えられないこと

たまたまこの話は性にまつわることになっているけれど、実のところこの手の話は世の中では非常に多くある。 「当たり前のことを最低限考える」ということをしてないという問題だね。

女性はメインターゲットではないかもしれないけれど、十分に考慮された立ち位置にある。 その問題をいうならば、性別関わらずもっと小柄な人(成人でも130cm程度の人だっている)とか、非常に大柄な人なんかにとっては考えられた製品なんかほとんどない、という問題が発生する。

じゃあ、女性向けの製品はあるし、女性への適合性も考慮されているけれど、そうした人たちへの配慮は足りない、という話になるかというとならない。

簡単な話で、適合する製品を販売したときに、売れる数が全然違う。 特殊体型の人は特殊だから少ないわけで、販売したからといって数が売れない。 というか、そういう人に向けて作ってもそういう人たちが買ってくれるとは限らないわけで、全く売れない可能性すらある。

それ以前に、それは企業活動なのだから利益を出さなければならない(利益を出すのは国に定められた企業の明確な義務である)のだけど、少数の市場に向けて製品を投入しても採算がとれない。 それは許されないけど、採算が取れるようにしたら、今度はものすごく高くなる。高くなっても採算が取れないかもしれない。

そのことを前提にすると、そういう特殊な人はカスタムメイドなり、オーダーメイドなりしなさい、ということになる。 どのみち製品化されても高額にならざるをえないのだから、そこに追加のコストが発生するのは避けられないし、特殊な事情であればメーカーが「なんとなく合わせた」もので解決するとは限らないのだから自分専用に合わせてもらったほうがいい。 だから、現実的な話としてオーダーメイドのほうがずっといいし、つまり少数の市場に合わせて製造するメリットは双方にとって非常に乏しい。

ある程度のボリュームが見込めて、なおかつ既存製品の応用が効くのであれば、多少の制約を加えて販売する、ということもある。 それは必ずしもその製品によって利益を出すわけではないけれど、それでもある程度直接でないにせよ利益をもたらすものでなければならない。 こういうのは、例えばXXLやXSの服なんかがある。XXLの服は通販限定だったり、非常に少数なので発売直後しか入手できなかったりする。だからセールを待って買うとかはできない。

私が使っているXSのヘルメットもそうだね。 54cmのヘルメットを使う人は非常に少なくて、事実上の受注生産になっている。なので、普通のサイズなら店頭にあるか、数日で手に入るものが、XSだと数ヶ月待ったりする。それに、限定カラーとかはXSはラインナップされてない、とかある。

でも、まだそれでなんとかなるからという話であって、私はスーツとかレーシングスーツとかはどうしようもないのでオーダーメイド前提。まぁ、スーツは上下別で買ったりしてるけど。デスク周りだって、苦手なDIYを怪我しながら頑張って組み上げたものだし。

そうして考えていくと、「女性に合わせてない」という主張は、かなり差別的な発想。

だって、「女性」という括りでいうけど、女性だって身長にせよ体格にせよ千差万別なわけで、分布の端っこ、あるいは離れに存在する人だっている。 ところが、これは「女性に合わせるとはこういうことだ」というものを固定しているので、その人が思い描くのとは異なる女性は「女性ではない」という考えに基づく差別でもある。 そもそも、適合性ということを考えれば「小柄な人に合わせる」で良い問題(女性の問題が小柄に合わせるとイコールじゃないよ。骨格が違うからサイズの問題じゃない、みたいなものもたっくさんある)に対して「女性に対する問題だ」と主張するのは、そもそも物事に対して向き合っていないよね。

物事を考えないことは、私は罪だと思っているけれど、それは私の価値観・宗教観だからどうでもいい。

けどね、考えもせずに声を荒げることで他の誰かを傷つけようとすることは、間違いなく罪だよ。 性別もトピックスも関係なくね。「それを言われる立場なら現実どのように対応しうるか?」と一瞬でも考えればわかるようなことだもの。

この手の話題は経営者や企業に対する極めて自己中心的かつ横暴な主張・言動として見ることが非常に多く、それ以外にも社会には非常にありふれているもの。 人間としての知性や理性を大事にしたいよね。

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